小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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カテゴリー 小説 の記事一覧

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三島由紀夫 『春の雪』-豊饒の海(1)- 

今年は冬に一度も雪を見ることなく、このまま暖かい春になってしまうのかなぁ、生活するには過ごしやすかったけどキンと冷える空気を感じず、雪も降らないまま桜を見るのもなにやら物足りないなぁ…などとお天気話をそこかしこでしていたら、3月になって雪が降ってきたよ!あーびっくりした!

というわけで、春に降る雪か~とすぐに溶けた雪にちょっとホッとしつつ思い出したのでこちらをば。つ三島由紀夫春の雪』*豊饒の海全4部作のうちの第1部。

春の雪 春の雪-豊饒の海(1)-
三島 由紀夫 (1977/07)
新潮社

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この作品は昭和44年1月に新潮社から出版された。
こるちが持っているのは昭和52年7月初版発行された文庫版の第45刷版(平成9年9月発行本)、定価552円(税別)の朱色の背表紙の新潮文庫だ。

維新の功臣を祖父にもつ侯爵家の若き嫡子松枝清顕(まつがえきよあき)と伯爵家の美貌の令嬢綾倉聡子(あやくらさとこ)のついに結ばれることのない恋。
誇り高い青年が、「禁じられた恋」に生命を賭して求めたものは何であったか?
…大正初期の貴族社会を舞台に、破滅へと運命づけられた悲劇的な愛を優雅絢爛たる筆で描く。現世の営為を越えた混沌に誘われて展開する夢と転生の壮麗な物語『豊饒の海』第1巻。

裏表紙より。




たしか、この小説、妻夫木聡がこの偏屈天邪鬼青年清顕を、竹内結子が誇り高く行動的な令嬢聡子、及川ミッチーが聡子の婚約者として登場する宮家の治典王殿下(はるのりおうでんか)役で出演して豪華なんたらな大正初期の貴族映画になっていた。

春の雪 春の雪
妻夫木聡 (2006/04/28)
東宝

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実は映画は観ていませーん。
でも原作を読んだだけですが、配役はまあまあ違和感なくいいんじゃないかなーと思います。

ただ、この『春の雪』を大正時代の青年貴族の悲恋物語としてだけ捉えてもあまりおもしろくないんじゃないかなぁ…と思ったりしています。(観てないからなんともいえないのですが)

この物語は、その美しい青年と令嬢の悲恋の物語だとか、後4部作となるために導入部としての輪廻転生の物語でもあるとか内容を語ることもありなのですが、改めて読み直してみて、これは内容が素晴らしいとかそういう小説ではないような気がしました。

こんなことを言っては緻密に計算して書き上げた作家に失礼かもしれない。
でもこるちは、この小説は「文字が美しい」とか「音が美しい」とかそう表現したくなる文章の絵画だと思っています。

ほんとうに「ほう…」と読みながらため息が漏れます。
文字が美しくて。
フォントがきれいとかそういう意味じゃないですよ!(^^;

正直言って、主人公の清顕も聡子も4部作の語り部として登場する清顕の唯一の学友本多青年も貴族である侯爵や伯爵も軍人としてほとんど感情を発露することなく登場した治典王殿下も、この物語で登場して思い入れるキャラはいないんですよ私には。
しかも、恋愛物って読んでいても「へー、ふーん、あ、そう」みたいに実はあまり感情移入できなかったりします。

悲恋とあっても「恋愛なんて大体そんなもんでしょーよ」で感想は終了!こんな感じです。

だから、内容じゃないんです。
P409(解説含まず)の長い長い文章に、飽きるところがまったくない。
どこを切り取って読んでも「美しい」。
キレイな画集をぱらぱらめくっているような気分で読める小説なのです。

三島由紀夫って、すごいなー。
もう読んだ後はこんな単純な感想しか出てこない。

読む前は、死んだ時のエピソードが強烈だったからか「痛いヒト」みたいな印象しかなかったんだけれども、このヒトの文章、小説を読んでみて始めて

「文章にも美しさってのがあるものなんだ!」

とこの同じ「文字」の羅列がその配列ひとつでこんなにも輝きが違うものなのかと実感できた時の衝撃ったら!

不思議なもので学生時代は日本文学にまったく興味もなく、三島由紀夫も心酔してる学友もいたし、熱烈に語って薦めてくれた人もいたと思うんですが、個人的には全然興味がなかった。そんな昔の人の作品なんて興味ないし、と。

有名過ぎる作家なので、三島由紀夫そのものや三島由紀夫の書いた小説の話はよく耳にするし、ものすごく分析も解説もされまくっているのは知っていたけれども、実際に自分で読んでみようとは思わずそのまま社会に出たわけだけど、はやりどんなに詳しく書かれていても、人が評論したものでその作家の真髄は理解できんものなのだと思いました。

だって、どんなに詳しく作家の経歴や物語の時代背景を詳細に解説してもらったって、だれもあの三島由紀夫の文章の美しさは表現しきれないんですもの。

心洗われるお話や、読んで悲しくて泣いたり切なくなってしまう小説はそれなりにあるけれども、読んでいて文字の「美しさ」にうっとりする小説なんてそうそうない。

こればかりは、自分でページをめくって一字一字読み進めていかなければ、あの文章の美しさに触れることはできないのだ。
正直、この「豊饒の海」シリーズがどういう結末になっているのか…とか、私はあまり興味がない。
ヘンな話、三島由紀夫の小説に「ストーリー」(内容)は求めていないのだ。

もっとも、それも作家自身が練りに練って計算しつくして小説として完結してるからこそ「気にしない」でいられる安心感があるせいなのだけども。



奔馬 奔馬-豊饒の海(2)-
三島 由紀夫 (1977/08)
新潮社

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暁の寺 暁の寺-豊饒の海(3)-
三島 由紀夫 (1977/10)
新潮社

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天人五衰 天人五衰-豊饒の海(4)-
三島 由紀夫 (1977/11)
新潮社

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それとも最後まで読むと、また予期せぬ美しい扉が開かれるのだろうか?
タイトルの「春の雪」は、小説中では2月も末に降る雪で、「絵画」のような物語を包む淡い「額縁」のような印象を残すのでした。



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リンゼイ・デイヴィス作・矢沢聖子訳 『密偵ファルコ 錆色の女神』 

もうすぐバレンタインデー、てことでちょっとテンプレート変えてみました♪

さてと、ファルコ繋がりで強引に小説も紹介しちゃえ♪
錆色の女神

密偵ファルコシリーズ第3弾 『錆色の女神』(さびいろのヴィーナス)
リンゼイ・デイヴィス:作 Lindsey Davis
矢沢聖子:訳
光文社文庫 定価629円(税別) P419
平成11年(1999年) 9月 初版発行


舞台は、紀元71年のローマは皇帝ウェスパシアヌスの時代。
帝国のスパイとして働く自由市民のファルコ(30歳・自称男前)のお話、第3弾はどうやらスパイと言うより浮気調査とかやってる儲からない下町の探偵物語、といった趣。

ローマ帝国のお話ですが、作者はイギリスの公務員を13年勤めた経験もある方(イギリス版篠田節子氏?)で、この密偵ファルコシリーズで人気を博し、イギリス推理作家協会の【歴史ミステリー大賞】も受賞したシリーズだそうです。

もちろん原作が面白い!というのもあると思いますが、本書は訳がとっても原作にあっていたように感じます。(って原作読んでないでしょうがっ!と自分で突っ込んでおきます^^;)

でも翻訳モノって苦手なんですよぅ。なんかこうテンポが悪いのってあるじゃないですか?原作がそうなの?って思わないでもないですが、翻訳の表現力の違いで、その印象が随分変わったりしますよね。

そういった点で読んでみて、本書は最初の数ページでスッとお話に入り込めるし、紀元71年頃のローマ帝国の歴史とか全く知らなくても、牢獄から出たファルコが行きつけ公衆浴場でこざっぱりし、身分違いの恋人へレナに会う頃にはもう気分はすっかりローマ市民になっているからあら不思議!

いいですねぇ、自宅に居ながら古代ローマの町を闊歩するってのは!
ローマの8月は猛暑でうだるそうですよ、皆さま。
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