小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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09月の記事一覧

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荻上直子監督の『かもめ食堂』つながりで④ 

はまったーーっ!いいよ、いいよ!この映画!続けて2度観たよ。
(あれ!? 何気にもう9月も末じゃないですか)

Working dog presents(オーストラリア映画)の月のひつじ(日本公開2002年)

月のひつじ コレクターズ・エディション 月のひつじ コレクターズ・エディション
サム・ニール、ケヴィン・ハリントン トム・ロング パトリック・ウォーベートン 他 (2003/04/25)
パイオニアLDC

*詳細を見る



時代は1969年(昭和44年)7月アポロ11号の月面着陸に世界がどきどきしていた頃、舞台はオーストラリアは羊しかいないような片田舎の町パークス

アポロ11号計画といえばアメリカのNASAだけれど、その人類初の月面着陸を全世界に中継したのがオーストラリア(パークス)の巨大パラボナアンテナからだったとはあまり知られていない事実。
こるちもこの映画を観るまでそんなことはまったく気にしたこともなかった。
もう「アポロ=アメリカですよね」みたいな。

月のひつじ』という邦題とパッケージの少年と羊のファンタジックなデザインから、なんとなくレイ・ブラッドベリの短編小説みたいなSFちっくなファンタジー映画を想像して観たんだけど、これはその月面着陸をオーストラリアから中継したという事実をもとに作られた、実に浮ついたところのないしかし観終わった時に感慨深い爽やかさを味わえるすっばらしい!映画なのでした。(個人的にはものすっごいヒット!)
 
アポロ11号や月面着陸という題材といえばアメリカ映画ですよね?、なイメージなわけですが、アメリカ映画って時々げんなりするような表現が多いんだよなぁ。
何かトラブルがあるといきなり口汚く殴りあい罵り合いの喧嘩が始まったり、とにかく最終的には何がなんでも家族愛が一番!とか、必ず「悪役」は最後に「正義の味方」or「主人公」にめったくそに踏みにじられてやられて惨めに消えるとか、みんなで苦境を乗り切ったら誰彼かまわず抱き合って「ヴィクトリ~!!!!!」とか…。
それはそれで別に悪いことでもないけれども、「いちいち極端で大げさなのよ…」とつぶやきたくなる日本人のこるち。(あ、クリント・イーストウッドの『スペース・カウボーイ』は好きです~)




その反動か、このオーストラリア映画はとても日本人にもしっくりくる感情表現が満載のアポロ11号関係の映画で少々驚きの一品なのですよ。

もちろん任務を終えるまでの道のりにはトラブルもあるんだけど、その乗り越え方やリアクションが私の想像する「白人(英語圏の)」とはかなり違った印象だったの。
重大なミスをパークスの職員ミッチが犯した時も、「わーわー!」「わーわー!?」「わーわー!」バコッ!!…ととりあえず大騒ぎするというイメージのところでさらっと静かになって「…とにかくなんとかするんだ」と腹の内に怒りを鎮めて作業に専念する、とか、最大の難関を突破した時も、「やったー!!!」「わーい!わーい!」「ひゃっほうーーー♪」「いぇーーい!」ガッシリ!なぁんて抱きあうとかじゃなくて、「…やったな」「…ああ」「…よくやってくれた」「はい、あなたも…じーん」みたいに言葉少なくリアクションも少なく静かに握手してそれぞれが成功と達成感をじんわりと味わっている…みたいな余韻があったり。
台詞というか演出というか脚本というか、言葉は短いんだけど伏線も効いててものすごーく会話の流れが「洒落てるなぁ!」とうれしくなってしまいます。
よく、この映画の紹介で「ヒューマンコメディ」って謳ってあるんだけど、たしかに面白いんだけどこるちの中の「コメディ」とはちょっと違う気がするのよねぇ。
確かに「クスッ」と笑わせてくれるキャラもいるんだけど(カミカゼ兵学生のキースとかパークス警備員のH.クリークとか町長のボブと妻メイの漫才みたいな掛け合いとか)、でもあけすけな「ギャグ」という感じはしなくてなんかナチュラル~なトコロがこるち好みなのです。
日常生活でもこれくらいのユーモアで乗り切りたいなぁ!と感心した台詞が、風速25メートルの強風の中、軋むアンテナの衝撃に職員全員に緊張が走る場面でミッチが「…ジャニーンの車かも」とつぶやくトコロ。
真顔なのでしばらく「?」と観ているこちらは思うんだけど、映画の中のジャニーンのあの運転を思い出してしばらくしてから「ああ!そーゆー意味ねwww」と緊張の中にもクスリと笑いたくなる仕掛けがあったりします。

同じ英語圏の国でも「アメリカ人」と「オーストラリア人」(イギリス系)ではずいぶん感情表現が違うんだなぁ!(当たり前と言えばそうなのだけど)と目からうろこが落ちたですよ。
また劇中の音楽も同じように大げさでなくなんかイイ感じなのでサントラも是非!という感じです。

月のひつじ 月のひつじ
サントラ、ラッセル・モリス 他 (2002/06/26)
Project-T

*詳細を見る


=曲目=
1 : リアル・シング(ラッセル・モリス)
2 : ゲット・トゥゲザー(ヤングブラッズ)
3 : クラシカル・ガス(メイソン・ウィリアムズ)
4 : ラヴド・ワン(ラヴド・ワンズ)
5 : グッド・モーニング・スターシャイン(オリヴァー)
6 : ウィングス・オブ・アン・イーグル(ラッセル・モリス)
7 : 蜜の味(ピーター・サリヴァン・バンド)
8 : マスネ:歌劇「ケルビーノ」~何もないのなら(ドーン・アップショウ)
9 : メイン・タイトル -月のひつじ-
10 : 首相からの呼び出し
11 : ひつじ牧場
12 : 寄付金
13 : パークス
14 : ボブのテーマ
15 : グレンとジャニーン
16 : 世界が待っている
17 : アメリカ大使の到着
18 : ブラックアウト
19 : NASAに嘘を
20 : NASAとの交信
21 : アポロ11号を捜せ
22 : 短時間の授業
23 : アポロ11号の発見
24 : 風速25メートル
25 : ディシュを動かせ!
26 : 新世界着陸(オーストラリア少年合唱団・フィーチャリング・ティナ・アリーナ)
27 : パークスからの映像
28 : ハッピー・バースディ・クリフ




監督 : ロブ・シッチ(Rob Shich)

脚本・製作 : サント・シラウロ(Santo Cilauro)、トム・グレイスナー(Tom Gleisner)、ジェーン・ケネディ(Jane Kennedy)、ロブ・シッチ(Rob Sitch)

製作 : マイケル・ヒーシュ(Michael Hirsh)

ライン・プロデューサー : デボラ・コエイト(Debra Choate)

編集 : ジル・ビルコック(Jill Bilcok)

音楽 : エドモンド・コイ(Edmund Choi)

演奏 : メルボルン・シンフォニー・オーケストラ

セカンド・ユニットディレクター : サント・シラウロ


*サント・シラウロ、トム・グレイスナー、ジェーン・ケネディ、ロブ・シッチの4人はもともと地元メルボルンのラジオ番組で「Triple-M」という朝の番組で司会を務め、メルボルン一の人気番組に押し上げたという制作屋仲間。
1992年のTV番組「The Late Show」(コメディー系バラエティ番組らしい)では爆発的な人気を博しオーストラリアで一大センセーショナルを巻き起こした。
「Working Dog」という名は映画の製作・脚本・監督をこなす際のチーム名で、1997年製作の映画「The Castie」は10日間の撮影ながら20週で1,000万ドルを叩き出しオーストラリア一の興行成績を上げた映画となった。
以来10年以上の経歴を持つ製作チームなのだそうな。




=キャスト=
クリフ・ハクストン : サム・ニール(Sam Neill)
パラボナアンテナ基地の責任者。妻の遺志をついで、アポロ計画に参加している赤いカーディガンが似合う渋いオジサン科学者。

オーストラリアの升毅!?www。
升毅     サム・ニール

サム・ニールは同じくオーストラリア映画『ピアノ・レッスン』にも出演しているオーストラリアの地元人気俳優。


ロス・”ミッチ”・ミッチェル : ケヴィン・ハリントン(Kevin Harrington)
おおっぴらな性格の機械整備士。アンテナ操作担当。
NASAから来た職員アルのすかした言動がなにもかも気に入らないオージー。


グレン・ラサム : トム・ロング(Tom Long)
シャイなコンピューター技師青年。趣味は編み物の電子機器担当。
パークス一の美人・ジャニーンが気になるがデートに誘う勇気がでない。


アル・バーネット : パトリック・ウォーバートン(Patrick Warburton)
NASAから来た職員、いつもモノトーンのスーツにタイ。管制センターとの連絡役。
オーストラリアのカジュアルな仕事ぶりが気に入らないわけではないが、とにかく慎重派であるためミッチとは肌が合わない様子。


以上、パークスパラボナアンテナ基地科学者チーム。



ボブ・マッキンタイアー : ロイ・ビリング(Roy Billing)
パークスに巨大パラボナアンテナを独断で誘致建設した。
かつては”夢想家”と酷評されたがアポロ計画に参加できたことで鼻高々。
豪快で愉快な田舎の町の町長さん。


メイ : ジェネヴィーヴ・モーイ(Genevieve Mooy)
ボブの妻。秘密の話は次の日には町中に広がっている「内緒話はできないレモンな女」。
おしゃべりで躾けには厳しいが、夫の窮地には懐広く受け止める大らかさがある。


マリー : レンカ・クリパック(Lenka Kripac)
アメリカのニクソン大統領を「独裁主義者」と酷評したり、父親に「議員になったら徴兵制はなくしてよね!」と息巻く理想家?ボブの愛娘。
ヘンな兵学校生に好かれているが軍人は嫌いらしい。


ビリー : カール・スニール
アポロ11号の月面着陸計画に夢中の宇宙少年。ボブの息子。
パッケージの表紙になっております。


キース : マシュー・モーレ(Matthew Moore)
町長の娘マリーに首っ丈の「カミカゼ」兵学校生。元少佐で実戦経験のある町長を尊敬している。
マリー本人にはかなり嫌われている…が気にしないで何度もトライする精神は天晴れw


ルディ・ケラーマン : テイラー・ケイン
町の雑貨屋の店主でジャニーンのママ?。
町長ボブの妻メイとはおしゃべり仲間。


ジャニーン・ケラーマン : エリザ・ゾニート(Eliza Szonert)
パークスの職員へいつも差し入れを持っていくのはグレンが気になるかららしい。
運転は荒いが美人で気が利くいいコである。


H.クリーク : (?)
パークス天文台の警備員。
使命感をもって仕事をしているが愚直すぎてジャニーンには「ばっかみたい」と言われている。



オーストラリア首相 : ビル・ブラウン(Bill Brown)
オーストラリアがアポロ計画の一端を担うということで、羊牧場しかなかったパークスに国家的な期待を寄せる。


アメリカ大使 : ジョン・マクマーティン(Jhon McMartin)
人類初の月面着陸を全世界に中継配信するということで、パークスにアメリカ代表として表敬訪問しに来た町が受け入れる最大の重要人物。
小さな町がアメリカ国歌を間違えて演奏しても「ハワイ5-0の国歌も乙なものさ!」とユーモアも忘れない。



=ストーリー=

南半球最大のパラボナアンテナだという理由でアポロ11号計画の月面着陸のTV中継を任された小さな町パークス。
1969年7月、羊しかいないような小さな町は浮かれ、その日を迎えるのを待っていた。
しかしある日の停電によりアンテナ基地は月に向かうアポロ11号の位置を逃してしまう。
アポロ11号の位置を捕らえなければ音声もデーターも受信できず、月面着陸のTV中継もできないのだ。
月面着陸のTV中継は田舎町パークスの天文台にとっては一世一代の出来事。
NASAに正直に話せばアポロ11号の位置を教えてもらえるが、このままでは「パークスは位置測定もできないのか」と補助的な仕事に格下げされてしまうのは必至だ。
科学者としての意地で、NASAにミスを隠してしまったパークスの職員たち。
なんとしても月面着陸までにアポロ11号の信号を捕まえなければならない。
ギクシャクしていたミッチとアルも必死にその位置を測定するために協力しあう。

なんとか信号を補足でき、職員たちもトラブルを乗り越えてチームとしてまとまってきたが、待ちに待った中継のその当日、普段は穏やかな気候のパークスを風速25メートルの強風が襲う…。
直径63メートル、総重量1,000トンのパラボナアンテナは、その巨大さゆえに強風をまともに受けるとどうなるか分からないという弱点があった。

基地の責任者である所長クリフは、その決断を迫られる。
無理を押してアンテナを月に向けるか、職員の安全を考え、中継を他所に任せるか…。



ビル 「この強風ではアンテナは使えない。最初からパークスが中継できなくて残念だよ…」

メイ 「どこが中継しても関係ないわ、今はアポロ11号計画の一員として成功を祈りましょう。…シャツが出てるわよ、あーた」



アル  「"11"は幸運の数字だよ」

グレン 「…時には一歩踏み出す勇気も必要かと」

ミッチ 「あんたは男だ、そうだろ?クリフ」



町の住人もひとつになったその日、パークスに奇跡は起きるのか---?








オーストラリアには一度旅行で行ったこともあるので、なんとなく親近感もあります。
メルボルン(チーム・ワーキングドックの地元)は地味ですがイイ感じの街で、夜中にぷらっと出歩いていてもそう危険な感じがなく、比較的治安がいいというのが印象的でした。(夜に中華街をうろつかない方がいいとは忠告されましたが…)

メルボルンでは「藤原とうふ店」ロゴ入りまんまハチロク(トヨタのAE86でしかもパンダトレノ)が走っていてびっくりしたり、お店で買い物中クレジットカードを出すとレジのオネエサンが「カワイイ!カワイイー!!」と日本語で話しかけてくれたり(私のことではなく、クレジットカードにスヌーピーかなんかのキャラクターが描かれていたせいだと思われ)、MOTO-GPのレース観戦が目的でメルボルンまで行ったわけですが、駐輪場と化したフィリップアイランドのだだっ広い牧場がビッグバイクで埋まっていたのにたまげたり、なかなか印象深い土地でしたよー。

フィリップアイランド駐輪場(牧場)にて


そういえば先日のMoto-GP(もてぎ戦)では、目下5連覇の王者V.ロッシ(28)を押さえ、この日本でオーストラリアの新星レーサー、ケーシー・ストーナー(21)が年間チャンピオンを手にした歴史的なレースでありました。今期なんかドゥカティが強いなぁ!またレギュレーションが変わったのだろうか。
解説がノリックと辻やんだったので楽しかったからまあよいか。
坂田もいたらもっとよかったけど…。(ああ、すっかりあたしの中でGPの時代が止まっている…)

★【MotoGP:ストーナー悔しい6位も年間王者決めた! サンスポスポーツニュース:2006年9月24日更新記事

日本戦で日本人レーサーが入賞できなかったのは残念ながら、オーストラリア繋がりでなんとなく^^;ほほほ。

後はエアーズロックケアンズにしか寄らなかったので、今度行くときはパークスという町の南半球最大のパラボナアンテナを見に行きたいなーと思います。



★【パークス電波天文台訪問記:2002年12月

やっぱりこの映画でずいぶん有名になったんですね~!>パークス
うんうん、観た後で「パークスの天文台に行ってみたい!」って思いましたもん。




つーか、『かもめ食堂』→『バーバー吉野』→『恋は五・七・五! 』→『笑う大天使(ミカエル)』→『キッチン・ストーリー』→『ジェイミーズキッチン』→『月のひつじ』でなんで繋がっているのか!?


それは原題が『THE DIHS』(お皿)だったからw。
*「DISH」はその形状が「お皿」みたいなことから来たパークスのパラボナアンテナの愛称です。

ちなみにこの映画の冒頭、老人クリフ(サム・ニール)の老け顔メイクを担当したのは「Noriko Watanabe」(ノリコ・ワタナベ)という日本人女性のようです。(日系かも?)
エンドロールにもご注目あれ!

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荻上直子監督の『かもめ食堂』つながりで③ 

というか、ベント・ハーメル監督の「キッチンストーリー」を観たので、映画だけでなく「キッチン」という文字に連鎖反応して見てしまったのがこちら。

Jamie's Kitchen ジェイミーズキッチン
ジェイミーさんの台所だ。

DVD冒頭からだと、「大きな口」のイギリス人がカッコつけて料理を作る、とかそんなイメージだったんだけどこれは観ていて印象が変わっていった。

おもしろい!www

実にいろいろな面で勉強になるドキュメンタリーだと思う。(ドキュメンタリーなのかヤラセなのかよくわからないけどw)

ジェイミー’s キッチン vol.1 ジェイミー’s キッチン vol.1
TVバラエティ、ジェイミー・オリバー 他 (2006/12/22)
アーティストハウス

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冒頭はドラマチックに展開していく。
ジェイミーというイギリスの若き有名料理人があるプロジェクトを立ち上げるところからドラマが始まる。
それは、学歴なし、職なしの若者(簡単に言うと問題児?)をオーディションで15人を選抜、経験なしの無名の若者を一年で一流レストランのシェフに育て上げるというものだ。

1000人以上の若者を60人に絞ると、それぞれの「料理に対する熱意」とか「味に対する表現力」を見るために彼らが食べたことのないような料理をテイスティングさせるのだが…。

これがひどい。
当のジェイミーが驚くほど彼らの「味」に対する反応がお粗末なのだ。
私から見ると、多く外国人は未知の料理、未知の味に対して無関心な印象があるのだけど、彼らは「食べたことがないから」口に入れたものが不気味に思えるのか、おいしいとか、酸っぱい、甘い、苦い、辛い、香ばしい、パリパリしている、etc …「味」を表現できる者がほとんどいないのだ。(60人もいるのに)

しかし、この辺りは「味」に対する知識というよりも「国語的表現力」の乏しさなのかもしれない。
表現力の乏しさを嘆かわしいと感じるのは日本もイギリスも似たようなものかもしれない。
ジェイミーは「ボクが彼らに求めるのは料理の腕じゃない、味に対する感性ややる気と熱意を重視したい」と語りつつ若者たちのその感性の想像以上の乏しさに愕然とする。
しかし、料理の技術を訓練することで感性も磨かれていくはずだとジェイミーは前向きだ。

60人が30人に、そこからさらに半分に絞られて、無職の若者15人が選ばれるところがオープニングで最も盛り上がるところだ。
1000人以上の候補者から勝ち取った「チャンス」に若者らもジェイミーも無邪気に喜びを表現する。
若者らは今の失業生活から抜け出せる!と、ジェイミーはそんな彼らを育て上げるという前代未聞の(無謀ともいえる)目標に希望を持って。



だが、ここまではまだスタートに過ぎない。
研修生にもジェイミーをはじめとする講師陣にもこの先思いがけないような試練が待ち受けているのだ。


ジェイミー’s キッチン vol.2 ジェイミー’s キッチン vol.2
TVバラエティ、ジェイミー・オリバー 他 (2006/12/22)
アーティストハウス

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基礎知識のないところから料理のイロハを教えることはかなり難問のようだ。
包丁の扱い方どころか、さまざまな器具や食材の名前、みじん切りとさいの目切りの違いから教えていかなければならない。
料理をお客に出すには衛生管理という大事な知識を叩き込まなければならない。
講師の先生たちも、研修生のあまりの無知と手際の悪さに「想像以上にひどいな…」とてこずる。

この基礎知識を習得する段階ではまだジェイミーは彼らを指導しない。
ベテラン講師陣は、普段の研修だったら一話して終わるところを、三も五も説明し、さらに「どうして覚えられないんだ!?」とイラつくのぐっと我慢して何度でも繰り返して説明していかねばならない。
しかし、若者たちは講師のこの忍耐強い指導や叱責を「あいつムカつくっ!」と反発する。
まじめに取り組む、ということがクールじゃないと思うのかできないのかはたまた単に性格なのか、講師を授業中におちょくってニヤニヤ笑ったり、地味な訓練を続けていくことに飽きて授業を欠席し始める研修生も現れ始める。

冒頭で1000人以上の候補者の中から選ばれたという「ラッキー」なチャンスせっかく掴んだのに、それを理解しているとは到底思えない言動を研修生たちは繰り返す。

無職だということに配慮されてもちろん交通費は支給されているし、料理の訓練なのだから訓練中の食事に困っているとは思えない。

無職で生活が厳しいから、お金がないから、家庭に問題があるから、「行けなかった」と泣きながら語るが(でも連絡の電話一本も入れない)何度も同じ行動を繰り返し、ただ単に忘れていた、二日酔いで寝過ごしたと遅刻や無断欠席の理由を悪びれずにさも当然のように語り、挙句「電車や道が混んでいて遅れたんだから今日は自分のせいじゃないわよね」、と開き直り反省のかけらもない。

とにかくもうありえへんわ、こいつら…。

なんというかー、責任感がなく、個性とか自分自身を保守することにばかり頭を使い、プロジェクトが自分に尽くすのは当たり前と当然のように思っているようなのが見ているこちら側からも腹立たしい。

厳しい叱責にキレて暴れ暴言を吐く、停学処分になっても「あいつがオレを怒らせたからだ!」と決して自分を省みない。


私だったらとっとと退学処分にして放り出してしまうところだが、ここが講師陣はじめジェイミーの感心するところ。
ある者は「もっと厳しくするべきだ」と言い、ある者は「でも彼にはやる気はあるみたいなんだ。だからもう少しチャンスを与えてやってみようと思う」と親身にかばい、健忘症で物覚えが悪い研修生には「キミだけを特別扱いにはできないが、授業中は一番前に来て私のそばにいなさい。できるかぎりサポートするから」と冷静な対処を忘れない。
プロジェクトの最終的な責任者であるジェイミーはそれぞれの意見を聞き、研修生たちに自ら何度も電話をかけ、話を忍耐強く聴き、穏やかに彼らを説得し続ける。(電話を切った直後に「ふざけんな!」とつぶやきながらもw)

ある程度技術を教わると、彼らは本格的なレストランに修行に出される。
料理を習って1年もしない素人に近い彼らを受け入れるレストランの懐は広いと思う。
たとえ研修生の給料を払うのがプロジェクト側でも、使えなければ邪魔だし負担がかかるのはレストランの方だ。
まあ、それもジェイミーの人脈と人徳の賜物といえるのだが、そんな稀有な経験をお膳立てされても無断欠勤、遅刻、勤務中のおしゃべり、「その仕事はできない」と拒否したりと問題行動は頻発する。

手際の悪い料理にあきれてお客が「それはもういいから、こっちにして」と注文を変更してきたのを厨房で「最初っからそっちを注文すればよかったのよ!」と逆切れしたり、「あいつの言うことにムカついたから、余っていたジャガイモをどろっどろに茹でてすり潰してこっそり捨ててやったの!ほうれん草もね」と得意顔で平気で語ったり…。

修行後に厳しい女性教官が

「あなたにはシェフに向いていない何かがあるわ、やめた方がいいわ」

と至極ごもっともな意見で諭しても、

「あなたに私のなにが分かるの?決め付けないで!」

と自信満々で憤慨したり、いつまでたっても、やることは半人前以下なのに言うことだけは一人前以上だ…。

この辺りになると、料理の技術云々や彼らの環境よりも問題は別のところにあるという気がするw
よく日本でも「格差社会」だの「ネットカフェ難民」だのと「社会の弱者」という印籠を掲げて社会そのものを批判しているニュースを流しているが、「仕事がないから…」と引きこもっていることを正当化してないか?
「チャンスがあれば自分だってここから抜け出せるのに…」と24時間マンガ喫茶・ネットカフェでつぶやくなら、この『ジェイミーズキッチン』を見てみるといい。
かなり耳が痛いかもしれないが、いい反面教師にはなるだろう。



ジェイミーも当初想像していた以上に自分の立てたプロジェクトが困難だと知り、生徒たちだけでなくレストランを開業するにあたって業者や会計士たちとの行き違いにストレスを抱えながらも、どんな時も皮肉とユーモアを忘れずこの問題児たちを奮い立たせ、目標に取り組むよう説得し続ける。

はっきし言って、ここまでくると料理番組というよりも

人間どこまで忍耐できるか大作戦!

みたいになっているw
勉強になるなぁ、と思うのはジェイミーがどんな問題に直面してもいったんは飲み込んで、腹を立てながらも冷静に対処しけっして投げ出さないということだ。(このプロジェクトのために借りたお金のせいで自分の家や事務所が抵当に入っているのだから投げ出すわけにはいかないのだ)


しかし、そんなことは研修生たちはお構いなしだ。
なにかあると

「自分は困難を抱えているからできなくても仕方がない。彼はそれを分かろうともしない、助けてくれようともしない。あの人は結局私のことなんか理解できないし、信用なんてしてないのよ」

と自分を棚に上げる。(爆)
私から見ればそんな彼女はその通りに信用できないのだが。
だって言い訳ばっかりだもの、「シングルマザーだから、子供を預けているから、母親が病気だから、この仕事が自分らしい仕事だと思えないから…」など等。

相手(ジェイミー)は自分より収入があってお金持ちでセレブだから、自分以上に苦しい思いはしていないと思って言いたい放題だ。

しかーし、この番組を見ているとジェイミーを心底尊敬する。(それ以上に同情もするwよくもまあ、ここまで性格に問題のある者ばかりを集めたものだ)
研修生たち以上にやはりジェイミーはあちこち駆けずり回り精神的にも金銭的にも肉体的にも自分の持てるものをすべて投げ出してプロジェクトに賭けている。
ノリが軽いから簡単そうに楽しそうに見えるが、あの怠け者で飽きっぽく、言われたことをすぐ忘れ、カメラが回っているとせっせと働く(フリをする)がカメラがいないと掃除や地味な下ごしらえを嫌がったり、失敗を叱られると不貞腐れて責任転嫁するような問題児たちを15名(脱落して後に13名)も抱えて目を光らせ、あらゆる問題を見逃さずまとめて指導するというのは、そりゃあ相当なエネルギーがいりますよ。
というか、そんなのと毎日一緒に働くとか考えたらぞっとする。
ほんと、ストレスでよくハゲないなと思う。
多分、よっぽど心が広いのだ。
どんなに問題児であっても「彼(彼女)は絶対いいシェフになっていると思う」と信じている。(どんなにその思いの半分も彼らが理解していないとしても)
そんな風でかなり老成しているように見えたから結構な年なのかと思ったら、なんとジェイミーって去年?一昨年の辺りでまだ27、8歳だと判明。

想像してたよりずいぶん若い!
しかし、若いからこそあの無茶なプロジェクトに膨大なエネルギーを注ぎこめるのかもしれない。



問題児たちもあそこまで真剣に親身になってもかまってもらえると、それなりの料理人になっていくということだから面白い。
…んー、料理人というにはまだ早いかな、「それなりに料理を作ることができるようになる」程度だけど。


レストランはすったもんだで開業し、本物のお客さんに料理を出すというところまでこぎつけたのは、ここまで見ている限り「奇跡」のようだ。
それぐらい「無理だろう、こんなやつらがシェフなんて…」という感じだったのだから。

もし、これが日本の番組だったらレストランを開業したところで研修生たちは晴れてシェフという仕事を手に入れ「やればできるんだ!」と涙を流して感動的に終わるところだ。







だが、現実はそんな映画のエンドロールみたいにきれいな部分で終わるわけじゃない。

本当の試練は、さらにそこからまた始まるのだ。
オーディションに受かって「ラッキー」と思ったら厳しい訓練が待っていて、一年の厳しい研修を乗り越えて本物のシェフとして働くことができて「ハッピー」と思ったら、今度は言い訳の聞かないお客を相手に日々忙しい毎日が待っている…。

レストランを開業してからも脱落者は増える。
15人の合格者は研修中に13人になり、開業してからはさらに減って9人になってしまった。
それほど「現実の仕事は厳しい」ということだ。


それは新米シェフにとってだけでなく、経営者としてのジェイミーも同じだ。
TVの宣伝や取材のお陰でレストランは人気で予約もいっぱい、評判もまあまあ。
しかし問題児の気質はそう簡単に変わることもなく、ある程度技術を持ったことで自信を持つのはいいけれど、それ以上に尊大さも加わって他の従業員と衝突したり、当初予想していたよりも経費がかかり、レストランの利益はないに等しい…。


ジェイミー’s キッチン vol.3 ジェイミー’s キッチン vol.3
TVバラエティ、ジェイミー・オリバー 他 (2006/12/22)
アーティストハウス

*詳細を見る



…と、そういった開業以降も次々に起こる問題に頭を悩ますのがDVD第3弾。
さあ、今度はどうやって乗り越える!?



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