小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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青池保子 『エロイカより愛をこめて』 ② 

『エロイカ~』は初めてこるちが立ち読みで大笑いしたマンガです。

当時、こるちは高校生。現在のように大きな古本屋もマンガ喫茶もなく、日々学問と部活に明け暮れる毎日でした。

マンガは好きでも買うお金も部活の帰りに本屋に寄る時間もほとんどありません。
それでも、土曜日の夕方だけは部活の帰りに学校から一番近い小さな小さな本屋さんに寄って、少年マンガ・少女マンガ合わせても2列にしかならない本棚を行ったり来たりして背表紙を眺めるのが週末の楽しみでありました。
一週間、その小さな本屋に立ち寄ることも我慢して、土曜日にだけ自分へのご褒美としてその空間を存分に楽しむことが至福だったのでした。
なんと安上がりな学生だったのでしょう。

まだその頃マンガにビニールの袋はかかっていません。
もう少し離れた所にあったもうひとつの本屋(ここもほんとに小さい)では腰も根性も曲がったばあさまが、学生の立ち読みと知るや、本当にハタキを持って飛んで来て目の前でばふばふ埃を払うという、今考えれば全くマンガみたいな典型的な追っ払い方をするのでした。
ですが、週末に楽しみに寄っていたその本屋・K書房は、毎週末にやって来てはたっぷり1時間はその小さな店内を行ったり来たりし、マンガの背表紙を真剣な顔で睨みつつ時に立ち読みし、結局何も買わずに帰って行く貧乏学生を寛容(?)に許してくれる、私にとって非常に慈悲深く精神の安らぎを得られるまさに‘楽園’のような場所でした。

当時からこるちは週刊誌・月刊誌を読む方ではなく、単行本になるまで我慢して我慢して我慢して、目の前にあるのに我慢して、「いいことがあったら買う」まで自分を戒めるというヘンな掟を課してしました。
それは、その頃いわゆるおこずかいが月1000円(泣)しかもらえなかった経済的事情に沿った自分政策のひとつでした。
財務省に予算の増額を申請するという方法もあったのですが、当時財政は切迫していると思い込んでいてなかなか言い出せなかったのを覚えています。
今考えると、財務大臣は趣味で中型クラスの船を所有していたので、(結構余裕あったんじゃ?)と思わないでもないですが…。

そういう訳で、こるちは週末ごとに本屋の背表紙を眺め、月に一度だけ予算を使うと決め、月末には同級生に「なんかいいことあった?」と聞かれるくらいそわそわうきうきしていたのでした。

その頃クラスで回し読みされていたのが『別冊フレンド』『別冊マーガレット』『集英社 りぼん』『白泉社 LaLa』あたりだったと思います。

特に紡木たくの『ホットロード』が大人気で、男子はブロッコリーのようにもりもりと髪を盛り上げ、カバンは教科書も入れずにぺったんこにし、上履きのかかとをふんづけて歩くわ、机に上って歌い始める(『机をステージに』参照)わ、女子は長いスカートに髪はボブカットで薄く脱色し、何気に廊下に佇み夕日に透けた前髪越しに哀しげにグラウンドを眺め、突然

「ばかやろぉ!みんな、みんな、…死んじゃえ~!」

と叫んで走り去ってみたり、

「えぐっ、えぐっ、ハルヤマァ~!」

と泣き崩れるのが流行ました。
紡木たくのあの降ったすぐ後に融けてしまう雪のような繊細な絵柄と、哀しくもクールな不良に胸がキュウンとなる摩訶不思議な連鎖反応でクラスの女子の多くが、この月刊誌が回ってくるのを楽しみにしていたのです。

前置きが長くなりましたが、その当時クラスで流行っていたのは学園もの、かっこいい不良が出てくるもの、繊細な思春期特有の恋愛もの、ごちゃごちゃ難しい理屈は置いといてとにかくキュウンとくればいいのだ!みたいな感じだったとお察しください。

やたら突っ張るのが流行り、‘なめ猫’なんつーものが異常に人気を集めたくらいです。
猫が学ラン羽織って

「なめんなよ!」

とガン飛ばしたポスターに覚えがありませんか?あれ、あれです。
親や先生に逆らうことにアイデンティティーを求め、ガラスの心を持った十代にはびんびん響く不良マンガ、それが当時こるちの周囲で流行っていたのでした…。


『エロイカより愛をこめて』第1巻(昭和59年・1984年42版発行版)当時定価370円
20060201132611.jpg


なんというタイトル。‘愛’の字にハートが二つも付いてますよ。
そして、表紙にはゴージャスな金髪巻き毛の美青年・伯爵が紫のバラをこれまた二つも肩に飾り(バラにかかるホワイトの輝きが生花であることを示しています)、耽美な雰囲気満載なのにむき出しの肩にはしっかり筋肉が付いて上腕二等筋までも表現されています。

以降第2~5巻まではお耽美軽薄そのものの伯爵と黒髪強面で堅物そのもの少佐の対照的なツーショットが続きます。
20060201121712.jpg


しばらくこのタイトルと表紙の濃ゆ~いベタさ故に手に取っては棚に戻し、パラパラめくってはページいっぱいにぎゅうぎゅうと詰まったセリフと情報量の多い絵に腰が引け、また棚に戻すという事を繰り返したのでした。

ところがある日、唐突に『エロイカ~』を手に取って読み始めます。
はて?何故?
時々、興味もないのにマンガの方から「読んで、読んで~!」と呼びかけられる事はありませんか?
この時もそうだったように思います。あんまり呼ぶから「しょうがないなぁ、じゃあちょっとだけね」みたいな。


シーザー・ガブリエル
ロンドン大学講師 18歳

シュガー・プラム
美術学生 16歳

レパード・ソリッド
スタント・マン 19歳

---彼らは三人の超能力者


彼らはペルーのナスカ高原で迷子になった時に現れた不思議な老人に助けられ、三人にそれぞれ特殊な超能力を授けられます。
シーザーは20ヶ国語を話し、15の博士号を持ち、尺八からシンセサイザーまでプレイできる大天才で、シュガーは視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感+第六感・予知能力に長けテレパシー使い、レパードは体力・運動能力抜群の超タフガイという設定から入ります。

そして、クリスマスの夜にロンドン国立美術館、パリ・ルーブル美術館、ニューヨーク・メトロポリタン美術館その他で同時に美術品が盗まれる事件が発生。
と同時に美しさと美術品に対する審美眼の確かさに打たれ、シーザーを手に入れたいと願う伯爵とエスパー3人の攻防がドタバタと繰り広げられます。
しかし、最後にはシーザーの純粋さに負けた伯爵が盗んだ美術品すべてとシーザーを解放しますが、シーザーは伯爵のとろける様なキスで18歳にして初めて恋に目覚めてしまったところで、NO.1終了です。

このNO.1では『イブの息子たち』の主人公たちが遊び心でチラッとだけ登場します。


しかし、このNO.1エピソードで華々しく登場した準主人公たちはNO.2で伯爵と少佐の間で目的と任務の遂行のために人質になったところで方向転換、いっきに少佐が台頭してきます。

エピソードNO.2は、一応シーザーの超能力(優れた美術品鑑定能力?)について調査し、危険性が感じられるようならしかるべき処置をするという任務を受けるところから始まります。
気に入らない任務でも命令であれば忠実に遂行する、貴族出ながら東側のスパイからも

「鉄のクラウス」

と恐れられている男として少佐は登場しました。

少佐、まだ12等身です。足が異様に長いです。
お顔も心なしかほっそりしてて若い感じです。

しかし、さすが少佐。いきなり、

「ランボルギーニ・ミウラ。(中略)
おれはああいう車に乗るやつはきらいだ。軽薄なナルシストだ」


と言い捨て、エーベルバッハ家の美術品を見に来たイギリス人、真っ赤なノースリーブ姿の伯爵とは握手も拒否。(伯爵も負けずに強引に握手をしてしまいますが)
コレクションを褒められても、

「おれが集めたわけじゃない」

『紫を着る男』の絵を褒めても、

「少しだまれ。おれは忙しい」

この絵のよさが分かるのかと問われて、

「それ1枚でレオパルド戦車が1台買える」

と真顔で答え、芸術を愛する伯爵を絶句させます。
伯爵も

「この美しい芸術品を鉄の塊に換算するとは(中略)。
あなたと私ではまったく価値観が違うようですね」

「私もある意味では軍服は好きだ。
(中略)うちに秘められた情熱というか…きっちり着込んだ軍服をはぎとってみたいという欲求をおこさせる一種の官能的な美しさがある…」


と今度は少佐の真逆をいく芸術観を披露して少佐の反感を買います。

「おれはきらいなものはきらいだ」

「私も好きなものは好きだ。そして好きなものは必ず自分のものにする。
(中略)きみにとってこの絵は無価値だ。ブタに真珠だね!」


「………」

「………」


第一印象はお互いかなり悪いです。
そしてこの状態はその後もほとんど変化していない、というかしばらくはほんの少し目的と任務のために協力することもありますが、変態泥棒と生真面目軍人の関係は変わってはいないようです。

この回では、少佐のご先祖様の絵『紫を着る男』を盗んだ伯爵と、超能力を調査するためにシーザーを拉致した少佐の攻防が主軸になります。
交換条件を出されても、お互い気に入らないと自分のやりたい方法で相手を追い詰めていきます。

「許さん!もう絶対に許さん!
きさまがねらったものは必ず手に入れる主義なら、
おれはねらった敵は必ずしとめる主義だ!
どこまでも追ってやるぜ伯爵!」


目のアップが怖いです。
アウトバーンでは、開発したばかりの戦車レオパルドB・I(ベー・アイン)を駆って伯爵のランボルギーニを標的にぶっぱなす少佐。
うーん、楽しそう。

北海の離れ小島に追い詰めたものの、戦車の重みで橋が落ち取り残された3人。

寒さのため震える軟弱くんシーザーを暖めながら、

「デリケートというより軟弱だ、男らしくない!
ビシビシ鍛えてやらんと本人のためにならんぞ!」


となかなかまっとうなことも言います。

「おいなにかしゃべれ。気詰まりだ」

「いかがわしい話題はさけろ!もっとまじめな話にしろ!」


「歌でも歌うか、恋のバラードでも」

「そんなものはおれはきらいだ。健康的な元気なやつがいい」

「ドイツ国歌にするか?」

「シラけるからよせ」

なに言っても気に入らないみたいです。
じゃあ自分で歌えよ、と言われて第二次世界大戦中に歌われたドイツ戦車隊の歌を歌い出す少佐。


嵐も雪も太陽のほほえみも
灼熱の昼も凍てつく夜も
顔は砂塵にまみれていても
鋭気こそはわれらが命

わが戦車はごろごろと
疾風の中をつき進む

いかずちの響きのごときエンジンで
われらが戦車は稲妻のごとく敏捷に…


戦車の歌を歌ってちょっとばかり楽しくなったのか、

「きみは美しいものが好きだといったが、---みがきぬかれた鋼鉄の色ってのもいいもんだぜ」

なんて言って、ロマンチストの伯爵を喜ばせてしまうのでした。

最終的にはヘリで救助している隙に伯爵は戦車をまんまと頂き、その代わり少佐が冒頭で言ったように同等の価値を持つ『紫を着る男』の絵を返します。

絵は返ってきましたが、シーザーは単なる天才と判断、戦車が一台盗まれた分立場は苦しくなるにしろ、

「まあ、おれにはどうってことはないさ」

と淡々と報告する少佐、仕事人です。



基本的にまだみんな真面目なというか控えめなキャラで、妖怪経理ジェイムズ君もはげデブのホモ部長もまだまだおとなしい脇役を演じています。
少佐が硬派であればあるほど、彼らの奇天烈さが炸裂するわけですが、第1巻ではまだまだといったところです。


ちなみに、一度読み出したら止められず、第10巻まで読みふけった時はさすがに店長がさりげな~く近寄っては様子を伺っていましたが、やはり寛容(?)にほっといてくれたので、心おきなく柱の影で笑いを堪えながら読み続けられたのでした。
そして、あまりに面白かったためこるちはどうしても『エロイカ~』がほしくなりました。
でもいきなり10冊も買えません。
しかし、第10巻までまとめてレジへ持っていきました。
淡雪のような繊細なマンガで盛り上がっていた私は、『エロイカ~』の鋼鉄の戦車がアウトバーンをぶっ放すような野太いこの少女マンガにハートを打ち砕くかのショックを受けたのであります。
店長もちょっとびっくりです。
いつも店内を散歩し、買う時でも1、2冊しか買わない学生が、10冊もお買い上げ!?かと。



「すいません、これ予約にしといてください」

興奮していたこるちは、この面白いマンガがいつ売れてなくなってしまうかもしれないと心配になり、レジの後ろに取り置きにしてもらったのでした。
いや、誰も取ったりしないんだから…。
店長もそう思ったことでしょう。しかし、この様子なら必ず買うんだし…とでも思ったのでしょう、快くレジの後ろにそっと置いてくれたのでした。
ありがとう、店長!

この記事に対するコメント

ありがとう、店長!と一緒に言いたくなりました。素晴らしい出会いですね^^)これが初恋?否違いますし。。。(笑)
私は中学くらいでした。ハレルヤエクスプレスや劇的な春で落とされてしまいました。。。^^)なので、NATO関連の問題だけ得意でしたよ。

続きも期待してます。。。
【2006/01/07 20:04】
URL | youming #- *編集*

>youminngさん、いらっしゃいませ~。
ハレルヤエクスプレス(第3巻)は少佐の百面相が見られるし、少女マンガらしからぬ鉄道アクションも必見でした。ラストがまた粋で!
初恋ではありませんでしたがw、確かに落とされましたね~。
KGBの‘仔熊のミーシャ’も敵役でハゲおやじなのにいい味出してます。
【2006/01/11 13:40】
URL | こるち #- *編集*

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