小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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杉浦日向子 『百物語』 

江戸時代に「耳かき屋」なる商売がすでにあったと知って、江戸と言えばで杉浦日向子氏をすぐ浮かべたこるちです。

先日コメントで頂いたので早速『百物語』へ突入~。

百物語 百物語
杉浦 日向子 (1995/11)
新潮社

*詳細を見る

杉浦日向子
百物語

<作品メモ>
本書は1988年(昭和63年)8月、1990年(平成2年)12月、1993年(平成5年)7月に『百物語』(壱)、(弐)、(参)として【新潮社】から刊行されたものをまとめて文庫本1冊に改めて再発行したものです。
原稿は1986年(昭和61年)4月号~1993年(平成5年)2月号までの約8年間に渡って【小説新潮】に掲載。
途中半年間の休載期間あり。

1995年(平成7年)11月 初版発行
新潮社【新潮文庫
660P (解説含まず) 定価760円(本体738円)

杉浦日向子
1958年(昭和33年)、東京生まれ。
日本大学芸術学部中退後、江戸文化に魅かれ稲垣史生氏のもとで時代考証を学ぶ。
以後、江戸を題材とした漫画を描き、1984年(昭和59年)合葬』で日本漫画家協会賞優秀賞、1988年(昭和63年)風流江戸雀』で文藝春秋漫画賞を受賞。
また、『江戸へようこそ』『大江戸観光』など漫画作品以外の著書も多数。
1991年(平成3年)より‘隠居生活’へ入る。

---表紙裏扉より



この物語は、ご隠居が庭師を呼び寄せて閑居の退屈しのぎに奇妙な話を聞き始める…というところから始まり、最後の九十九話までこのご隠居さんが聞いた物語という構成になっている。

杉浦日向子氏はこの『百物語』で絵筆を置いて後、本当に「隠居生活」に入ってしまったようだ。
こんな面白い漫画を描いておいて絵筆を折る、なんて困ったお人だ。
まだ若かったのに。(当時まだ30代)
亡くなった今となっては本当に形見送りの文庫本になってしまった。

改めて、合掌。






古より百物語と言う事の侍る
不思議なる物語の百話集う処
必ずばけもの現われ出ずると




人々が目に見えないものを見、理性では説明のつかぬことを信じていた江戸の時代。
生と死の間で右往左往する人間たちの前に、時間を、空間を超えて現われる魑魅魍魎たち。
怪しのものと人間たちの滑稽でいとおしい姿と懐かしき恐怖を、怪異譚集の形を借りて漫画で描いた<あやかしの物語>。

---本書裏表紙より。






「大したものだ。
お前が庭をいじると見違えるほどに広々とする。
こっちで一杯やんなさい」


「へへ、ご隠居お構いなく」

「年寄りの侘住、退屈でならないから何ぞ珍しい話でも聞かせておくれ」

「へい、それでは御免なさい。
奇妙な話を聞きやしたっけ」


「ホホウ」

「はばかりながら、番町のお屋敷と申しやしょう。」



…『魂を喰らう話』



「なるほど、奇妙だ」

「おや、お湯(ぶう)かと思いしや御酒(ごしゅ)とは…。
ソレト、さっきから良い匂いがいたしやす」
クンクン

「これか、伽羅の線香よ。
人から上物を丁度百本貰ったから百物語の勘定にと」


「ひゃ、百物語!?」

「今日より閑居を訪れる人に一話ずつ物語を乞うて徒然のなぐさみにしょうと思っての…」

「いやだなァ、ご隠居…」

「なァに、九十九話迄聞いて残りの一本は無事を祈って立てるとしよう」



こうしてご隠居の聞き集めた「百物語」が始まる。

改めて読み返してみると、書き込みの少ない、一見「雑な」絵に見えるが、どうしてかすんなりと「江戸の世界」へ入れてしまう不思議な絵柄なのだ。
99話全編が7Pのショートショートの形式で、常に同じ「絵」で描かれているわけでもなく、シャープな浮世絵風なのもあれば、丸っこい少女漫画風もあり、中国風な水墨画の趣のものもありとさまざまな後味を感じる。
漫画は、写実的で背景や人物にやたら書き込むほど世界が出来上がる、…というわけではないという見本のような本になっている。

もしかして、それは日本人お得意の感覚なのかもしれないけれど。

目に見えない部分を想像力で見る…という能力とでも言おうか。
もちろん、それだけではない漫画の力が読む者をすんなりと「江戸の世界」へ誘うのは間違いない。

…となにやらこっちまで文体も日向子風に変化している不思議。
この世界をコトバで語るのもなにやら野暮ったいのでともかく是非ご一読をお勧めする。

ただし、百話目のお話をご自分で語らぬように…。
ご忠告まで。


其ノ一 魂を呑む話
其ノ二 障子の顔の話
其ノ三 橋のカワウソの話
其ノ四 鳥屋喜右衛門の話
其ノ五 狸の僧の話
其ノ六 墓磨きの話
其ノ七 鰻の怪の話
其ノ八 異形の家人の話
其ノ九 雨中の奇物の話
其ノ十 数原家の蔵の話(上・下)

其ノ十一 お七の話
其ノ十二 かぴたん奇法の話
其ノ十三 比君ざんげの話
其ノ十四 産怪二話
其ノ十五  〃
其ノ十六 影を見た男の話
其ノ十七 顔だけの女の話
其ノ十八 亡妻の姿の話
其ノ十九 道を塞ぐもの三話
其ノ二十  〃

其ノ二十一  〃
其ノ二十二 長持の中の話
其ノ二十三 人肉を喰らう話
其ノ二十四 天女の接吻の話
其ノ二十五 蛇と竜の怪二話
其ノ二十六  〃
其ノ二十七 天狗になりしという話
其ノ二十八 冥府の使者の話
其ノ二十九 雪中の美人の話
其ノ三十  盆の話

其ノ三十一 森美作殿屋敷の話
其ノ三十二 駆け出す女の話
其ノ三十三 妖怪二話
其ノ三十四  〃
其ノ三十五 星の井の話
其ノ三十六 酒壷の話
其ノ三十七 抜けた首の話
其ノ三十八 小鬼二話
其ノ三十九  〃
其ノ四十  産女の話(上・下)

其ノ四十一 地獄に呑まれた話
其ノ四十二 旅の夢の話
其ノ四十三 人茸の話(上・下)
其ノ四十四 闇夜の怪三話
其ノ四十五  〃
其ノ四十六  〃
其ノ四十七 枕に棲むものの話
其ノ四十八 人に化ける獣二話
其ノ四十九  〃
其ノ五十  別れの知らせ三話

其ノ五十一  〃
其ノ五十二  〃
其ノ五十三 二人女房の話
其ノ五十四 猫と婆様の話
其ノ五十五 嫌うもの二話
其ノ五十六  〃
其ノ五十七 仙道考二話
其ノ五十八  〃
其ノ五十九 魂呼びの話(上・下)
其ノ六十  腹中の声の話

其ノ六十一 狼の眉毛の話
其ノ六十二 手の怪二話
其ノ六十三  〃
其ノ六十四 鮒女房の話
其ノ六十五 絵の女の話
其ノ六十六 木の葉の里の話
其ノ六十七 死んだ人二話
其ノ六十八  〃
其ノ六十九 遊魂の話
其ノ七十  即身仏の話

其ノ七十一 竹林の再会の話
其ノ七十二 黒髪の怪二話
其ノ七十三  〃
其ノ七十四 訪う気配二話
其ノ七十五  〃
其ノ七十六 魚怪二話
其ノ七十七  〃
其ノ七十八 兇夢の話
其ノ七十九 他人の顔の話
其ノ八十  長雨の怪二話

其ノ八十一  〃
其ノ八十二 蜘蛛の行者の話(上・下)
其ノ八十三 足の怪三話
其ノ八十四  〃
其ノ八十五  〃
其ノ八十六 鴨男の話
其ノ八十七 人魚譚三話
其ノ八十八  〃
其ノ八十九  〃
其ノ九十  狢と棲む話

其ノ九十一 山息子の話
其ノ九十二 大楠の話
其ノ九十三 借り物鳥の話
其ノ九十四 賑やかな留守の話
其ノ九十五 擬宝珠の話
其ノ九十六 フキちゃんの話
其ノ九十七 愛娘の霊の話
其ノ九十八 赤い実の話
其ノ九十九 杢兵衛の孫の話

解説:高橋義夫






「おや、もう菜の花が出たかの。
芹(せり)と土筆(つくし)も戴こう」


「アイ」

「おさきさんは幾つンなる?」

「ノウ、此頃ァ数えン。
なんでも午(うま)じゃ」


「ならコウト。八十と九だ。
左様に達者で余程神仏の加護がある」


「勿体ない、こげな姿に。
ただァ、お稲荷さんにァお辞儀しやす」


「ホホウ。
長生きの内には、サゾ不思議な事にも遭ったろうの」


「ナンノ。恥ばかり」

「サ語らっし。聞かさっし」

「ならばァ、旦さん、御耳ィ穢しょ。

ととの話。
何で、ンナ話したンだか、ととの母ちゃ、オレん婆様だ。…」




…『杢兵衛の孫の話』



狐はこの辺りに年古く棲む杢兵衛狐で、
杢兵衛とは始めに誑かされた長者の名だ。

杢兵衛狐は人の心を上手に覗き、思う相手に化けた。
最期は逃げず、真直に撃たれた。

命数を悟っていたのだろう。





「ととの話はそこ迄じゃ。

アノウ、旦さん。
モシ狐に化かされそうになったら、

『杢兵衛の孫へ言い付けるぞ』

と仰ッせい。
並の狐なら悪さァせん筈じゃ」


「アア、有り難う。
サテ、残りの一本は杢兵衛祖父(じい)にあげよう」


そう言ってご隠居は最後の百本目の線香に火をつけた。




「これで九十九話語り仕舞、済み済まし。

有り難う」




この記事に対するコメント

お久しぶりです

こんにちは。杉浦さんは本当に文化人でしたよね。両親がNHKの「お江戸でござる」を見ていたので、彼女の博識にはいつも感心していました。本当に惜しい人を亡くしたものです。あの荒俣宏氏と結婚していたこともあったそうで、「お似合いのカップルだったんだな」と思いました。
他の記事も拝読していますが、こるち様のエンタメに関するアンテナは広範ですね。メジャーとマニア、オタク系とギャル系など、くくりに拘らずに面白いものを好んでおられるようです。
【2006/11/11 10:59】
URL | 館主@毒入り #X.Av9vec *編集*

杉浦日向子氏

☆館主さま@毒入りさま、いらっしゃいませ~。
お久しぶりです~。
アンテナは範囲が広いというより、どうも芋づる式に転がっていくので本来の主旨が…な感じになってきている次第です。

もう亡くなってずいぶん経ちますが、氏の人気は高いですね。
今も生きておられたらなぁ…と最近よく思います。
合掌。

>荒俣宏氏と結婚していたこともあったそうで
またそんな妖怪夫婦な…w似合いすぎです。
そういえば、つい最近までマンガの『鋼の錬金術師』の作者をずっと荒俣宏氏だと勘違いしてました…。
【2006/11/13 17:55】
URL | こるち #- *編集*

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