小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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フィリップ・ノイス監督 『裸足の1500マイル』 

<作品メモ>
2002年 オーストラリア映画(UNIVERSITY OF QUEENSLAND PRESS)
原題:『RABBIT-PROOF FENCE
邦題:『裸足の1500マイル』2003年公開
裸足の1500マイル
GAGAホームページ

監督・製作:フィリップ・ノイス PHILLIP NOYCE
1950年 オーストラリアニューサウスウェールズ州グリフィス生まれ。
その他の関係作品:
ラスト・ジゴロ』'87
『ブラインド』'89
パトリオット・ゲーム』'92
硝子の塔』'93
今そこにある危機』'94
『セイント』'97
ボーン・コレクター』'99
『The Qwiet Amerikan』'02


製作総指揮:ジェレミー・トーマス JEREMY THOMAS
1949年 イギリスロンドン生まれ。
関連作品:
戦場のメリークリスマス』'83
ラストエンペラー』'87
『シェルタリング・スカイ』'90
リトル・ブッダ』'93
『魅せられて』'96
BROTHER』'01


撮影監督:クリストファー・ドイル CHRISTOPHR DOYLE 中国名:杜可風
1952年 オーストラリアシドニー生まれ。
関連作品:
欲望の翼』'90
楽園の瑕』'94
恋する惑星』'94
天使の涙』'95
ブエノスアイレス』'97
初恋』'97
サイコ』'98
花様年華』'00
HERO』'02


音楽:ピーター・ガブリエル PETER GABRIEL
1950年 イギリス、ロンドン生まれ
プログレッシブ・バンド「ジェネシス」の元メンバー。
脱退後はソロで活動中。


原作:ドリス・ピルキングトン ガリマラDORIS PILKINGTON GARIMARA
1937年 西オーストラリアジガロングから60Km北西の集落生まれ。
映画の主人公、モリーの娘。
モリーと共にムーア・リバー居留地に強制収容された。
'02年現在、29人の孫を持つ祖母となっている。



出演:
モリー・クレイグ MOLLY CRAIG 
エヴァーリン・サンピ EVERLYN SAMPI
 1988年 西オーストラリア、ダービー生まれ。


グレイシー GRACIE
ローラ・モナガン LAURA MONAGHAN
 1980年 西オーストラリア、ボートヘッドランド育ち。


デイジー・クレイグ DAISY CRAIG KADIBIL
= ティアナ・サンズベリー TIANNA SANSBURY
 1992年 南オーストラリア、メートランド生まれ。


ネビル監督 NEVILLE
= ケネス・ブラナー KENNETH BRANAGH
 1960年 北アイルランドベルファスト生まれ。
関連作品:
『ヘンリー5世』'89
から騒ぎ』'93
ハムレット』'96
『セレブリティ』'98
『恋の骨折り損』'99
ワイルド・ワイド・ウェスト』'99
ハリー・ポッターと秘密の部屋』'02





見たのは最近ですが、かなりお気に入りの映画です。

もともと見ようと思ったのは以前(それこそ'02年頃ですか…遠い目)映画館でこの映画の予告を見た時に【撮影 クリストファー・ドイル】とクレジットがあったからでした。



ドイルと言えば、香港の映画監督ウォン・カーウァイ王家衛)の映画でのカメラワークで有名です。
正直何がどういいのか上手く説明できないのですが、とにかく個人的にくドイルの‘絵’が好きなのだと申しておきましょう。
たぶん、光と影の使い方とか色彩のコントラストが目に鮮やかというか優しいというか…いろいろあるのでしょうが。↓こんな感じです。
欲望の翼
                      『欲望の翼』
恋する惑星  天使の涙『天使の涙』

楽園の瑕   『HERO 英雄』 花様年華1

HEROトニー・レオン
*あ、『HERO』はチャン・イーモウ監督ですね。

たまたま90年代にウォン・カーウァイ監督作品にはまり、と言うか出演者の香港俳優陣にメロメロになった頃で、レスリー・チャントニー・レオントニー・レオントニー・レオンetc…に夢中になり、出る作品がたて続けにウォン・カーウァイ作品で撮影もドイルだった…と。

その頃はネットで検索、みたいなことはあまりしてなかったのですが雑誌で「香港映画にはまる女性たち」とかそんな特集がよく組まれてた覚えがあり、映画や俳優の情報はほとんど雑誌などから集めていました。

香港映画では、撮影スタッフや俳優が家族のような関係になるとよく聞きます。
ブエノスアイレス
’97年の『ブエノスアイレス』はわざわざ地球の裏側のアルゼンチンを舞台にした中華系ゲイムービーですが、俳優には

「こんな感じの映画だよ」
とテキトーな説明でアルゼンチンくんだりまで呼び出しといて、

「君、ゲイの役ね♪」

と逃げられない状況になってから指示するとか、急に言われた本人は3日間ホテルに篭って葛藤したとか、女優陣もいてさんざん撮影したのに公開してみたら全部カットされてたとか、その時その時の思いつきで撮影するので演じている時の設定と編集された後の設定が全く変わっていたとか、日本人的感覚からは考えにくいことを平気でできるってのが魅力なんだか、経費の無駄使いじゃ?とか。

そのような状況のなかで、その『ブエノスアイレス』のシーンで印象的なのが南米・イグアスの滝の空撮シーンです。
イグアスの滝どどどどどど…
*参考画像
空撮だから、当然ヘリかセスナだかに乗り込んでの撮影です。
ちょうど雨が降った直後で、普段よりものすごい水量の濁流が水煙を巻き上げている迫力ある瀑布のシーンでした。
映画の中でもかなり重要なシーンです。
このシーンを、撮影担当のドイルは当の監督を置き去りにして、主役の俳優とスタッフを連れて勝手に撮影してしまったといいます。

だって、ウォン・カーウァイ監督が来ると

無駄に長い撮影になっちゃうからね(笑)


!??!
なっちゃうからねって、そんな大事なシーンを監督抜きで撮ってきちゃっていいんですかーーー!?
当然監督も激怒したらしいのですが、結局そのままドイルの撮影したシーンを編集で使ってます。
あまりカメラや撮影そのものに興味はなかったのですが、このエピソードを知ってからドイルのファンです。







そうして公開から4年後に改めてこの映画『裸足の1500マイル』を観たら、やっぱりドイルの‘絵’は好きだな~と。

実はこのフィリップ・ノイス監督そのものについてはよく知らなかったのですが、自身がオージーだってことと自分のアイディンティティーについて考えた結果、このような題材を選ぶきっかけになったようです。
そういえばドイルもオーストラリア生まれです。



さて、この映画1時間40分くらいで最近にしては短めの映画です。

時代は1931年、西オーストラリア州

100年間アボリジニは白人入植者によって侵略を受けていました。
西オーストラリア州のアボリジニ保護局長のネビル監督は、アボリジニ保護法によって、原住民と白人の混血児を保護する目的で混血児たちを親から強制的に引き離し、施設で保護する権限を持っていたという補足説明から始まります。
また、混血児と白人の結婚の許可を下す権限も持っていたことや、むしろそれを奨励していたらしいことも示唆されています。
西オーストラリアの北西部ジガロングの集落に住む、モリー(当時14歳)、グレイシー(10歳くらい?)、デイジー(8歳)の3姉妹(グレイシーは従妹ですが)は原住民の母親と、近所にウサギよけのフェンスを作りに来た白人男性との混血児です。

モリーたちは女だけの部族で厳しい自然の中で狩りをして生きています。
母親たちから生きるための知恵を教えてもらいながら、狩りの上手な娘に育ちます。
ジガロングにはアボリジニのための配給所があり、定期的に小麦や砂糖、お茶、衣類などの配給も受けていますが、彼女たちは特に卑屈になったりはしていないようです。ネビル局長がモリーたちを保護しようとしていると聞かされても、

混血児がそんなにほしいなら自分でつくればいい

と逃げも隠れもしません。

ところが、もうすぐモリーが全くの原住民と結婚するとネビル局長に知れ、とうとうある日突然彼女たちは母親と引き離され、ジガロングから南に1200マイル(1900㎞)のムーア・リバー保護施設に3人の姉妹(従妹)は強制収容されます。

ネビル曰く
混血児たちを白人社会に溶け込めるように保護する必要があるのです。
施設に収容し、召使いや労働者になるための訓練を受けさせ、白人の知識を授けてやるのです。
アボリジニを助けるために




施設では体を洗ってもらい、英語以外で話すことを禁止され、食事の時にお祈りをさせられたり、たまに局長の前で教育の成果を示すため、英語の歌を歌ったりします。
収容とはいっても、施設に塀や柵があるわけでもありません。
逃げ出そうと思えば結構簡単に逃げ出せます。
しかし、同じアボリジニの追跡の名人・ムードゥーに必ず探し出され施設に連れ戻されてしまい罰を受けると分かっているので施設に長くいる仲間たちはたいていあきらめてしまってます。

裸足の1500マイル1
けれど、14歳だったモリーは母親や故郷を忘れていないので、グレイシーと小さな妹デイジーを連れて故郷ジガロングを目指して逃げ出します。
はるか1200マイル(1900㎞)離れた母親に会うために---。



タイトルは1500マイルなのに、あれ!?
確かに最短距離は1200マイルですが、地図も持たずにただ故郷がフェンスのそばにあったことだけを頼りに移動するため、300マイル(500㎞)も遠回りになり結果的に1500マイル(2400㎞)を歩くのです。…私なら500kmってだけでもくじけそうです。
豪州地図
地図参照:sachiさんの旅HP【旅のススメ】より。

この映画の魅力は、なんといってもこの少女たちと追跡人との静かな戦いっぷりです。
追跡劇とはいえ、ただひたすら少女たちは歩き、追跡人は足跡を辿って追い詰めて行きます。
犬なんか使いません。目で足跡を見つけ、アボリジニの視点に沿って探します。
同じアボリジニだからこそ、モリーは狩りの知識をフルに活かし足跡を巧みに消しながらムードゥーを撒いて、北へ北へと小さな妹たちを連れて歩き進みます。

途中、何度かピンチも訪れますが、トラブルを激しい音楽や過剰な演出で煽ることはされていません。

この映画でもっともカメラが激しく動き、緊迫する場面は 冒頭の親子が引き離されるシーンです。

その時ですら、その後はただ淡々と静かに映像は少女たちの哀しげな表情を映していきます。
複雑な事情で追跡人をしている同じアボリジニのムードゥーやネビル局長の「あの子たちの命を助けるためなのだ」という断固たる意志、オーストラリア西部の乾燥した大地や、そこに住み様々な立場からモリーたちと接した人々、私達日本人なら20分に一度は水を飲まないと脱水症状を起こすという過酷な自然も同じようにカメラは映し出しています。


最後にとうとうモリーは生まれ故郷のジガロングに帰り着きます。
ムーア・リバーから9週間かけて歩き続けた末に。
母親と祖母に再会するそのシーンは、薄暗い空の下です。

アボリジニは肌が黒いので、薄暗いこのシーンではあまりくっきりとは表情も見えません。
日本の映画で思うのは、こういった場合ではもっと明るい照明の映像にしてしまうんではないでしょうか。
もともと明るい時に撮影して画面にブルーをかけて‘夜’という設定にしてしまうとか。
本当の暗闇の‘絵’を避ける、みたいな。
ドラマなどでも画面に今いちリアリティーが足りないと感じる時は、この‘暗闇’とか‘陰’の薄ーい存在感だと思います。
もっとがつんっ!と濃い‘暗闇’がほしい。

あっと、映画の続きです。


そして、その場面から遠く白んだ空を背景に母と娘たちの影と低く歌うように泣く声が響きます。



最後にクレジットが上がっていく時の音楽がまたいいです。
ピーター・ガブリエル作の♪‘NGANKARRPARNI’(SKY BLUE REPRISE)♪
という曲で、THE BLIND BOY'S OF ALABAMA& MYARN & NIGALI LOWFORD が歌っています。

北の国から♪のジガロング版みたいな感じです。
ゆったりと鳥が空を飛んでいるような、暗い夜がゆっくりと明けていくような、あるいは闇がやさしく世界を包んでいくような歌声が、低く、低く、繰り返し同じメロディをなぞり静かに流れていきます。


モリーはその後、結婚し子供を産み、もう一度施設に送り返されています。
そしてまた同じ道のりで故郷に帰ります。
合計3000マイル(4800㎞)は歩いてます。
そして、その後自分の生んだ娘2人もまた同じく収容所に隔離され、モリー自身は二度と娘とは会えませんでした。

映画ではこのくだりはモリーの淡々とした独白でさらりと触れられているだけです。

アボリジニのこの政策は1970年まで続いたとあります。
悲しいお話なのですが、映画は静かでとても美しい不思議な印象を残しています。
モリーの勇気や意志の強い目、グレイシーの母を思うが故の迷い、デイジーの末っ子らしい甘えんぼぶり、娘が脱走したと知らされた時のモリーの母が見せた「さすがはあたしの娘だよ」とでも言いそうな不敵は笑み。

そういう細やかな愛すべき視点がいくつも散りばめられています。



いろいろ好きなシーンがあるのですが、中盤にある、帰り着くための唯一の手がかりであるウサギよけのフェンス(RABBIT-PROOF FENCE)を見つけた時のシーンが特に好きです。
位置的にはやっと全体の2/5くらい進んだところでしょうか。
遥か北のジガロングでフェンスの有刺鉄線を握る母親たちと、同じくして遠く南部でフェンスを握って北を見つめるモリーたち。

ですが悲壮感は全くありません。
ほんの短いシーンですが、子供たちを信じる母親の視線と、必ず帰ると希望に満ちた少女たちの表情がとてもいいです。
モリー

この記事に対するコメント

どうもコメントありがとうございました!
私も何年か前に『裸足の5000マイル』DVDで見ましたよ!
こういうマイナーっぽい映画で名作を探すのが好きです。
残念なことに泣きはしませんでしたが、ただただ驚いきでした。そんなに歩くんかい!って(笑)
【2006/04/14 19:19】
URL | くりーぷ #0LYNDLy6 *編集*

☆くりーぷ様、いらっしゃいませ~。
あわわ、早速のご来店ありがとうございました。
この映画、‘絵’も好きですが、ラストの音楽がまたものすごく好きなんです。
でもなんて読むんでしょう?『んがんかーるぱーに』???DVDではメニュー画面にしておくと延々とこの音楽が流れるので一日中ずっとメニュー画面にしてました。
ちなみに>『裸足の5000マイル』では、えーとえーと…。
【2006/04/18 17:26】
URL | こるち #- *編集*

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