小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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青池保子 『修道士ファルコ』 

<作品メモ>
平成3年~平成4年(1991~1992) 【花曜日】季刊掲載
白泉社 【JETS COMICS】 P201
平成4年12月 初版発行 780円
修道士ファルコ1

chap.1: スペイン、カスティリア王国内、聖フランシスコ僧院。ドン・ペドロ王との対決。

chap.2: ドイツ、ライン川沿いのシトー派・リリエンタール修道院。聖女サウラの奇跡。兄弟オド老ヤコボ、ナルシスト画生アルヌルフ登場。

chap.3: ペーター・ホルネッグの隠された財宝と、遺産相続殺人事件。父を継母に殺された、息子ヨハンの復讐劇。

chap.4: 聖アンナ尼僧院の純粋培養聖女マルティナと、ケルンの商人・ベルトレド・ブラントの許されざる昔の恋の秘密。

あとがき: ドイツ修道院を取材旅行した時のお話。

本書のメッセージ:
 MUY ESTIMADAS AMIGAS ; PAZ Y BIEN ; 
<親愛なるお友達へ 平和とよき事があなた方とともにありますように--->



chap.1

14世紀後半---。
スペイン、ドン・ペドロ1世の治世下のカスティリア王国で
ある時、セビリヤの町に一人の修道士が現れた。

枯草色の髪と薄青の目は北方の血を示し、
馬上豊かな体躯はゲルマンの戦士を思わせた。

人々の噂では、彼は隣国ナバーラで名高い剣客の騎士であったという。
その剣が多くの血を流した罪を悔悛して、修道士になったのだと---。



物語は、ドン・ペドロ王の城の中。セビリヤ一の剣客とヨイショされる王・ドン・ペドロの剣の立会い試合から始まります。

そこへ、もとナバーラ王国一の騎士で300年前にフランク王国カール大帝が作ったスペイン辺境領に入植したゲルマン貴族の流れをくむ修道士が、聖(サン)フランシスコ僧院にいると噂で知るところとなり、この修道士を城に呼び出そうかとの話がでます。

そのかつて王国一とも謳われた元騎士のシトー派修道士が主人公、ファルコです。


ファルコは‘鷹’という意味でもあります。
少女マンガにおいて、【名前】は重要です。名は体を表すとも言いますから。
ファルコは通称であり、本名は苦行の一環として明かさないことになっています。

さて、ここでおもしろいのは、ドン・ペドロ王が臣下に神妙な顔でこの修道士との試合の手配を断るところです。
ヨイショ試合などしてもつまらん!というのです。
そうして、町を巡回中に僧院へ寄って密かにその修道士の様子を伺います。
その男が自分の相手にとってふさわしいかどうか。

その時ファルコは、水不足に悩む僧院の敷地でツルハシをふるい井戸を掘っています。


背後から忍び寄るドン・ペドロ王。
井戸を掘りながらもただならぬ気配に気付き、ツルハシを握る手にも緊張が走るファルコ。

カスティリアの獅子と謳われるドン・ペドロ王とナバーラの鷹ファルコの静かなる闘志の探りあいが視線も交わさずに描かれます。











「修行が足りんぞ、修道士」

若い(と言っても王より少し年上らしい)修道士の背中にただならぬ闘志を感じ取っただけで、いったん引き上げる王。
ファルコは王の殺気に反応してしまった己の未熟さを嘆いてお堂に篭ってしまいます。

「聖母マリアよ、私は未熟な修道士です。
俗世での習慣を変え、情念を捨て去る事の困難さを思い知りました。

王の気迫を感じた瞬間、戦士の心が応じたのです。
修道士である事を忘れ、戦士に戻ってしまったのです」

闘いに明け暮れた罪深い日々を悔いた時に、剣と共にすべてを捨てたはずなのに---
と。



この後、忍んでやってきた王と闘うことになったファルコは己の罪深さを嘆くことを忘れ、思う存分と剣を交わし自分と互角に渡り合う強敵に歓喜すら覚えます。
が、そのシーンよりも、お互い気迫だけで相手を計る先のもの静かなシーンの方が一種緊張感があって空気が濃いです。

思う存分剣が振るえた王と、王と闘うことで俗世の未練をさっぱりと捨てることができたファルコ。
二人は共に、互角の好敵手であることでお互いを称えます。

その時、ファルコの髪がトンスラでない理由が王の手で明かされます。

トンスラとは、歴史の教科書でも見た記憶があるのではないでしょうか、頭の頭頂部だけをつるつるに剃った、カッパのおかっぱ頭(?)のような髪型で、当時の修道士は必ずしなければなりません。
ところが、このマンガではファルコにトンスラはありません。もちろん他の修道士はきちんとトンスラで描かれてます。
何故?
…それは、このマンガが「少女マンガ」だからですー。

少女マンガにとって髪の毛もとっても重要です。
たとえば渡辺多恵子の『風光る』に性別を偽って新撰組に入隊した神谷清三郎こと富永セイという女の子の主人公がいます。年の頃は15歳。
風光る15
彼女の髪型も武士らしく頭のてっぺんは剃ってありますが、主人公が‘女の子’であるが故の名残から意図的に‘前髪’だけは残されています。


ファルコの物語では、彼の頭のてっぺんには「おぞましいあざがある」と言う理由があり、院長から剃る事を禁止されているというもっともらしい設定になっています。敬虔な修道士であるファルコ自身には、そのことが憂いの元でもあるわけですが。

「おお…!こ、これは…!

(中略)…おぞましいとは思わんがやはりむき出しはまずいぞ。
あまりに魅力的すぎて乱心した坊主共が頭を襲うかもしれん」


「わ、わいせつなんですか?」
落ち込むファルコ。

「思いつめるな、君が考えるほど悪いものではない。
一生君の頭にくっついているんだ。愛着を持ってやれ。

君の恋人がここにいると思えばいい。
大事な恋人は隠しておくものだ。
見せびらかすと坊主共がやきもちを焼くからな」


「…何だかよくわかりませんが、そう考えた方が気が晴れますね」

「君の恋人はとびきりいい女だ。
王の言葉だ、信じておけ



少佐といい、ドン・ペドロ王といい、こるちはこの手のキャラに弱いようです。



ちょうど『エロイカから愛をこめて』を中断して、中世の騎士や坊さんの世界に作者が浸かっていた頃の作品です。
このドン・ペドロ王、実は知らなかったのですが、『アル・カサル 王城』では主人公やってたお方でした。しかも、現在第12巻まで発行されてます!そんでもってまだ未完です。
アルカサル王城4
ほかにも中世の歴史もので『エル・アルコン 鷹』とかありますがこちらはどうやらありえないほど冷酷でドシリアスなマンガのようです。
エルアルコン鷹2
でもおもしろそうなので、これからの楽しみに取っておきたいと思います。うふふ。

しかし、時代は中世に移ってもキャラたちの骨の太さは変わらなくてうれしいいですね。
主人公のファルコドン・ペドロ王はもとより、chap.2以降から登場する、リリエンタール修道院での兄弟たち(修道士仲間)もいい味出してます。
ファルコのよき相談相手でもある現実主義的で腕っぷしも強い兄弟オド、ナルシストで汚いものはキライ、自分の美意識のためなら盗作もいとわない画生の兄弟アルヌルフ、時々聖なる魂が降りてきて不思議なことばを紡ぐ普段はオブナイ目をした老ヤコボ、幼いながら名誉と誇りのために闘う少年ヨハンとその忠実で演技派な執事エミール…。


(主人公を)ドイツ系にしたのは、私の趣味で、
頭のあざの設定は、主人公をトンスラ頭にしないための
苦肉の策だとバラしてしまおう。

とは作者のお言葉です。

作者は取材旅行でドイツにもでかけ、いろいろと修道士のアイデアを溜め込んでいたようですが、掲載していたこの雑誌が突然休刊になってしまいそれらも中断しまったようです。

*この頃すでにドイツ・エーベルバッハ市と作者は友好的な関係にあり、この取材旅行ではエーベルバッハ観光局長のホイン氏にずいぶん協力していただいたとあります。

ドイツの修道院を取材したいと伝えると、事前に予定を作り多忙な仕事の合間に自ら案内をして下さった。
2日間でマウルブロン、ボイロン、ロルヒを回る強行軍だったが
(修道院は大体不便な所にあり、一ヶ所の見学が一日仕事なのだ)、
彼はまるでエーベルバッハ少佐のように不眠不休不食で一直線に突っ走って
全工程を消化した。
(さすがはドイツ人)


『エロイカ~』を休眠させている1988~1995年の7年間に14世紀のスペインの王とドイツの修道院の2つの中世史マンガの連載に没頭していた作者でしたが、90年代半ばに出版社の意向により突然連載していた雑誌そのものが消滅。

その代わりに【月刊プリンセス】で改めて『エロイカ~』の再開と移ります。

その後、この中世史マンガもまたどこかで継続していると思いますが…。
修道士ファルコ』 面白いシリーズなので、是非続きも読みたいです。



…と思っていたら平成13年(2001)11月に、同出版社から『修道士ファルコ2』が出てましたー!
修道士ファルコ2

ついでに1と2が一緒になった文庫版もでている模様。
修道士ファルコ文庫


おお、ネットって便利だな♪
でも、本屋さんを歩き回って思わぬときに憧れてた方(本)や思い出のヒト(本)に巡り会えるあのアナログなときめきも捨てがたい…と思うこるちでした。

この記事に対するコメント

盛り沢山ですね。
『ファルコ』は読んでないので興味深々。。。『アル・カサル』は面白いですが主人公が女好きで。。。『エル・アルコン』は絶対にお勧めです。どちらも少佐のご先祖様という設定ですが、全く違うので比べてみてください。因みに『エル・アルコン』には、伯爵のご先祖様もでてきますので、お楽しみに~。
【2006/02/04 20:02】
URL | youming #- *編集*

>youmingさま、いらっしゃいませ~。
中世修道士モノってだけだと歴史を知らないからむつかしそ~!と思いがちですが、『ファルコ』はそんな知識などなくても十分面白く読めます。兄弟オドはトンスラ頭ですが、青池節が乗ってて大好きです♪
少佐のご先祖様は『七つの海七つの空』にも登場してるらしいですよ。
【2006/02/06 17:21】
URL | こるち #- *編集*

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