小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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猫十字社『華本さんちのご兄弟』 

作品メモ
剄(リ→カ)文社(多分ケイブンシャ)【パーキーコミック】(1986、1987年掲載)
白泉社 昭和62年(1987年12月)発行

小さなお茶会』の作者が描いた初のシリアス・ストーリをおなじみの白泉社でまとめた単行本です。『華本さんちのご兄弟

華本家は男ばかり4人もいる母子家庭。
勤労婦人の母を筆頭に、社会人の長男鹿之介、以下ごくつぶしの大学生・次男蝶太郎三男梅士四男桜彦、プラス華本家の愛猫ミチゾー♂を題材にバイク恋愛を織り交ぜて描いた人間+猫模様です。

前回ご紹介した『小さなお茶会』は毎回6Pで構成されていましたが、この作品群は
末っ子桜彦編の『金の鯛やき 銀の蛸やき』が51P、
次男蝶太郎編『な、泣きそベイビー』が58P、
愛猫ミチゾー編『ミチゾー、その愛』が60P!(やはり猫ものが一番長い?)。
これに8Pのあとがきが加わります。

華本さん家のご兄弟とはいえ、エピソードの中心になるのは四男と次男で、長男と三男は「むさくるしい男兄弟4人家庭」の背景を埋めるべく描かれている程度です。

どうしても『小さなお茶会』との比較になりますが、前回のがメルヘンたっぷりの和み系であるならば、この『華本さんちの~』はその反動で日本の松本(作者の居住地)を中心に、バイクやツーリングを絡めた極めて現実の恋愛事情を当然人間で描いたものです

『小さなお茶会』から入ると現実的な「人間」や背景の描写に「え!?」とギャップに陥るかもしれません。
ふかふかの毛並みや、メルヘンなお話、ほのぼのしたやりとりに馴染んだ後で本作にとりかかると、ツーリング先で拾った手帳をのぞき読んで

「バイクと俳句?…シャレだな、ばはははっは」

とばか笑いしつつ、‘ちょいといい男だったから本物がどんなもんか見てやろう’とか‘S大医学部生の名に微動だにしなかった-とも言えない’と下心を抱きつつきっちりメイクして手帳を返しに行く女子大生みさきちゃんや、寝起きに女が訪ねてきたと知らされて慌てて身繕いして出てくる桜彦くん「なんてリアルな…」と涙目になってしまったのを思い出します。


しかし、

「この作品群に使ったエピソードは、ほとんどバイクで松本周辺を駈けずりまわって拾い集めたものである」

と作者が言うだけあって少女マンガでは珍しくバイクそのものの描写もリアルです。
女子大生みさきちゃんが免許とりたてで乗っているのはオンロードのホンダ・VT250。当時初心者の女の子でも乗りやすいと評されていた記憶があります。
桜彦くんはオフロードのヤマハ・DT200R。しかもキック始動のみ。キックはちょっとしたコツが要り、慣れないとエンジンを掛けるのに汗だくになったりします。
ちなみに大学4年生空手部所属の次男・蝶太郎くんはフルカウルのヤマハ・RZV500Rのシングルシートですが、片恋の幼馴じみを乗せるために泣く泣くタンデムシートに付け替えることになります。
脇役扱いの軽薄な三男・梅士はスズキ・カタナに乗っていることがコマの片隅でも分かります。

1980年代のバイクマンガと言えば、しげの秀一バリバリ伝説』*昭和58年(1983年)10月に第1巻発行、通称『バリ伝』があります。
今年香港映画で実写化した『頭文字D』の原作者と言った方が最近では分かりやすいのかもしれません。
カタナは、その『バリ伝』の主人公・巨摩郡のライバル聖秀吉が乗るマシンとして第3巻に登場しますが、これまでにない斬新なバイクのデザインとこのマンガの人気でかなり印象深いため、今でも街中や峠でカタナを見かけると
「秀吉が乗ってたなぁ」
と思うこるちなのでした。
おっと、『バリ伝』についてはまた後日ということで猫十字社へ戻ります。


バイクの細かな描写は、その擬音にも表れています。

ホンダのVTが始動する時は‘きゅるっ どるるんっ

ヤマハのDTは‘どぅるひゅんっ’、
アイドリング中は‘でんでん、ででんでん、でん、でんでんでん’

同じくヤマハでもRZVは‘パアーーーーン’‘パララン、パンパン’

坂道を上る原付は‘べれれれれれれ、べれれれれれれれ’

ビーナスラインを追い越して行くスズキ・カタナは
オーーーーーン、ボン’‘フォン
また、ひらひらとバイクを切り返す様子は‘ひょ!、ひょ!’

と、2スト4スト・格メーカーごとの特徴を端的に表現しています。
‘絵’が上手いか?と言われれば少々もの足りない部分もありますが、このような擬音はバイク乗りが読めば、「うん、うん」と自然に頷いてしまうことでしょう。

さて、それにしても何故あの『小さなお茶会』の作者がバイク物なのか!?この小さな疑問は巻末のあとがきに作者の手書きの言葉で綴られていました。

以下引用

「うれしい。
たまたまギャグ作品でデビューしたばっかりにギャグ作家のレッテルを貼られ、10年間ギャグとメルヘンばかり描いてきまた。
でも本当に描きたかったのは長編のシリアス物だったんです。
ギャグの単行本が初めて出たときもそれなりにうれしかったんですが、本が出たことよりも、お金がもらえることの方がうれしかったような気がします。
でも今度のは心底うれしい。
苦節を10年もしていたので、力いっぱい根性も性格もゆがんでしまいましたが悔いはありません」

「趣味はバイク。
生まれてこのかた初めてアウトドアの趣味を持ったという不健全さである。
4年前、当時『黒のもんもん組』を描いていた作者は、話とネタの行きづまりの苦しさをプロレスに熱狂することで昇華しようとして失敗。
ついに医師に「心身症」と診断されるまでに身体と心を破壊してしまった。
病気になる一番大きな原因は、やはりその年に描いたデビュー作から通算2作目のコメディー『戦国御一家』の痛恨ぶりにあったようである。
作者の描く男のキャラクターの異様なたくましさはこのときの健康コンプレックスによるものらしい。
この『華本さんちのご兄弟』は実はその痛恨の作品を何年かかけて練り直したものである。
病気から回復して外に目を向けた。
バイクに乗って色々な場所に自力で出掛けるようになった。
この作品群に綴ったエピソードはほとんどバイクで松本周辺を駆けずり回って拾い集めたものである。
バイクのりには懲りない奴が多い。
たとえローンだけ残して新車をわやにしようと、骨を折って低気圧をいち早く察知するお天気人間と化しても、やっぱりバイクに乗らずにはいられない。
そして漫画描きという人種がこれまた超懲りない人種である。
どんなに〆切が苦しくても、失敗しても、一晩寝れば忘れてしまう。
二晩寝れば回復し、三晩めにはまた漫画を描きたくなる。

「まだまだ描きますよ。実は一等描きたかった三男坊の梅士の話をまだ描いてないんです。題名を『いつか花実の咲く日まで』にしたらほんとうにそうなっちゃいました。この180頁を描くまでは漫画描き、やめません。いっひっひっひ」

不敵に笑うとGジャンをひるがえして夜の松本シティーにフェードアウトした」


「どんなに忙しくても猫の手だけは借りてはいけない。
我が仕事場には現在3匹の猫・計6本の猫の手があるわけだが、こいつらの手を借りて極楽を見たためしがない。(中略)」


  「仕事中に寝ている者は、猫でも憎い」

とは巨匠山岸涼子先生のお言葉である。
けだし名言であるが、やはり猫が寝ているときには極力寝かせておくのが賢明。
猫の手を借りる時は、漫画描きをやめる時である。」




あとがきですが半ば本音で半ば冗談でもありましょう。
三男梅士のお話がその後どうなったか気になるところです。
もしご存知の方がいましたらご一報ください。



★猫十字社公式HPはこちら。→【いらはい!猫つぐら島

この記事に対するコメント

きゃーー!「華本…」って私の好きなマンガでした、そういえば!だのに忘れてましたーー!リアルタイムで読んだんですよ、そういえば、雑誌で!仔細を忘れたので単行本が欲しいですね。ヤフオクとかアマゾンで無いかな?

みさきちゃんとのラブコメディも良かったですねえ。温泉のシーンとか。

引用の言葉に思いましたが、良い作家はどんなジャンルを描かせても良いですよね。

「バリ伝」>一時期イニDにはまっていた時に、作者の前作であるバリ伝もマン喫で読んだんですよ。でも、イニDと同じで長すぎてだんだん冗長になっていったから最後までは読んでません。でも、こるちさんのバリ伝評見たいなーー。グンは格好良いですよね。秀吉も。妹の知世ちゃんという名前が時代を表してました(笑)。
【2005/12/29 17:34】
URL | 館主@毒入り #X.Av9vec *編集*

>館主さま、いらっしゃいませ~。
おお!『華本さんち~』をご存知とは結構珍しいかとw。こるちは単行本からなのでその雑誌【パーキーコミック】がどんな系列のものかまったく知らないんです。
『頭文字D』は逆にまだ手を染めてないんですが、実写映画が結構おもしろかったのでそのうち全巻買いに走るかもしれません…。
【2005/12/29 20:13】
URL | こるち #- *編集*

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