小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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秋里和国 『ルネッサンス』 全2巻 

秋里和国(あきさと わくに)
ルネッサンス』全2巻

ルネッサンス1 -Renaissance- ルネッサンス:復興・復活の意。

14世紀頃の古典文芸の復興運動がもとで一般的には文芸・宗教・美術などの復活を意味する。



<作品メモ>
第1巻
プチフラワー
1989年(*平成元年*1月8日から) 11月号
1989年(昭和64年)は1月7日まで。
1990年(平成2年) 1月号、3月号、5月号 掲載
小学館【PFコミックス】
1990年(平成2年) 9月 初版発行
1990年(平成2年) 9月 初版版
定価: 500円 (本体485円) P193

オゾン層が破壊され白人だけが滅びた数百年後の地球。
警察官エドワードは、身元不明のアカリと秘密に同棲していたが、ある日、二人の前に滅びたはずの白人女性が現れ…!?
待望のSFヒューマン・サスペンス、第1集。

-表紙扉より



「このガンは確実に子どもに遺伝する…。

もうだめだ…今さら紫外線をさけて地下にもぐっても手遅れで…。
このままでは人類が滅亡してしまう」


「人類が滅亡する?





滅びるのはあんたら白人だろ






=登場人物=

エドワード・ベリー : ジョーンズ州の熱血警察官。警官は耳に金色星のIDピアスをつけている。黒人♂。親戚がカナダとスペインにいる。
(今は男も女もなくってセックスも両性愛がノーマルで)「異性にしか興味のないぼくは肩身が狭い」



グレン : エドワードの相棒。同性愛者。パイロン♂と結婚間近。女性的要素(アニマ)が強い黒人♂。
「ねえ!まさか異性しかダメな人じゃないわよね?」



ルル : エドワードの同僚。両性愛者。スパニッシュ系のカラード(白人と有色人種の混血)?♀。
「あたしも結婚するなら同性がいいなあ」
「もしくは女性性(アニマ)の男性!」
「そう思うんだけどさ、そういう男に限って男を選ぶんだよ」



アマンダ・コ・タク警部 : エドワードの上司。黒人♀。恋人も♀。
「ベリー、きみのことをネッド(マイン・エド)と呼んでくれる人でもできたか?
幸せそうな顔をしてるぞ」




アカリ : エドワードの秘密の恋人。黄色人(モンゴロイド)♀。
「今時死語になった“女らしい”ってことばが当てはまるって言うんでしょ?

わたしたち、ヘンタイの同士ね」




W-14XX(マリア) : エドワードとアカリの前に突然現れた白い人間。白人(コーカソイド)♀。白人は新種の皮膚がんで全滅したとされている。



軻遇突智(カグツチ) : 原家の末の子息だが後妻の子ども。兄に疎まれている。黄色人(モンゴロイド)女性的要素(アニマ)が強い♂。(*火の神の名前)XXY
「ぼくは月夜見さまに嫌われてるし、みそっかすだから…」



三輪 : 軻遇突智の護衛。原家の親衛隊。黄色人(モンゴロイド)♂。
「警官だろうと軻遇突智さまを泣かすなんて!」



月夜見尊(つくよみのみこと) : 原社の社長。軻遇突智の兄。端正な顔つきの黄色人(モンゴロイド)♂。(*月の神の名前)
「いつ見ても醜い男だ…。整形くらいすればよいものを。
あれが美しかった義母上の兄だとは…」




八雲(やぐも) : 月夜見尊の側近。大日靈貴(おおひるめのむち)の婚約者。黄色(モンゴロイド)♂。
「ばかめ!
刀は突くんじゃない、斬るんだ!!」




日向(ひむか) : 月夜見尊軻遇突智の叔父(妹が軻遇突智の母)。科学者の黄色人(モンゴロイド)、醜い老人♂。
「いかにも自分の手を汚すのが嫌いなおまえのしそうなことだ」



素戔嗚(スサノオ) : 原家の次男坊。月夜見尊とは犬猿の仲でお互い反発している。荒っぽく奔放な黄色人(モンゴロイド)♂。
「ああ、くそっ!
このままじゃオレまで罪を着せられて殺されかねないぜ」




都司(つじ)園 : C.0.C.の主任。アマンダ・コ・タク警部♀の恋人であり、素戔嗚♂の恋人でもある。黄色人(モンゴロイド)♀。
「お次は基地の回転でも止めてみようかしら?
ねえ、素戔嗚」



ジョーンズ州知事 : C.0.C.の会員。カラード?♂。
「私の施設軍を出動させるなんてバカなことにならなくて良かったですよ」



大日靈貴(おおひるめのむち) : アカリの本名。素戔嗚軻遇突智の姉で原家の長女。家出中にエドワードと知り合う。
「なんて浅はかな… ルネッサンスを危機にさらすようなことを」




スカーレット : エドワードの家(マシン)の名前。


OLOCHI(オロチ) : HARA社(日本州)の新型車。成層圏まで飛べる特別仕様車もある。


C.0.O.(クラブ・ゼロ・オクション) : 会員制の白人レンタルクラブ。地球に11の支部がある。


高天原(たかまのはら) : 日本の古伝承における神々の国の呼称。






第2巻
プチフラワー
1990年(平成2年) 9月号、11月号
1991年(平成3年) 1月号、3月号 掲載
小学館【PFコミックス】
1991年(平成3年) 4月 初版発行
1991年(平成3年) 4月 初版版
定価: 500円 (本体485円) P199

行方不明のアカリが月にいることを知ったエドワード。
軻遇突智(カグツチ)の兄・素戔嗚(スサノオ)の協力を得て月へ向かうが、そこで彼が見たものは…。
地球から月へと舞台が移り、ファン待望のSFヒューマン・サスペンス、第2集・完結編。

-表紙扉より



月は   見ていた

地球を


         静かに




「父はイザナギ、母はイザナミ、姉は日の神大日靈貴(おおひるめのむち)、兄は月の神月夜見尊(つくよみのみこと)素戔嗚尊(すさのおのみこと)…」




「転移しなければガンは恐ろしくはないが、その新種の皮膚ガンは恐るべき早さで転移し、しかも子供に遺伝した。
この白人(コーカソイド)を襲ったガンを喜んだのは白人に迫害を受けていた有色人種だった。



「ざまーみろっ!白人なんかみんなくたばっちまえ!」
「お前らの時代は終わったんだ!」


一方の白人も

「白人が現在の文明を築き上げたんだ!」
「有色人種どもに地球を奪われてたまるものか!」



各地で小競り合いが始まった。
死者が出て暴動が発生し、やがて国同士の争いとなり、まず第3世界が核を使用した。


「白人を滅ぼせ!」

「有色人種を滅ぼせ!」

人種間民族間の憎しみほど激しいものはない。
もう見境がつかなくなり、あちらこちらで核が炸裂した。
皆が最終戦争と呼んでいる人種戦争だった。
何百年何前年という人種間のわだかまりが、ひとつのガンを契機に爆発したのだ。

戦争終結後、地球連邦政府が発足した。
国はなくなり州という名に改められ、軍隊を持つことは禁じられ、宇宙開発も軍備に繋がるということで禁じられた。
…が、州と名を変えてもやはり国は国。
警察という名の軍隊が州の防衛にあたっている。

長い歴史が培った異国人、異民族、所詮は永遠に天敵なのだ。

そして、あのガンの遺伝を未然に防ぐため、地球人は皆5代まで遡った家系図を組み込んだIDを耳に付けることが義務付けられた。

悲しいというのか愚かしいというのか…なかなか楽しいショーだったよ。







白人は世界のリーダーだった!
マスターだった!
いついかなる時もそのプライドを捨てず、有色人種は虐げられ続けた。

生き残った白人に、やつらの祖先のツケを払ってもらって何が悪い!?」




ルネッサンス : HARA社の「牧場」の総称であり、戦前からの白人文化地球復活計画の総称。


根の国 : 原家における地球の呼称。


咲子 : 軻遇突智の母の名前。火のように艶やかな女性だったが、軻遇突智を産んで後死亡した。咲子も染色体はXXY…ということになってはいるが…。








眠れる森の美男』『TOMOI』シリーズの後に出した小学館【プチフラワー】からのマンガです。
もしかしたら、絵が最も安定している頃かもしれません。
ちょうど1990年(平成2年)前後に描かれた近未来SFマンガです。

この頃の近未来はほとんどまず「核戦争」による壊滅的な地球崩壊が起きてからXXXX年後の地球…という設定が多いみたいです。
秋里和国はデビュー当時からこの性差(セックス)の垣根を越えるというテーマをマンガに自然に取り込んできたようなところがあって、それがデビュー作の『花のO-ENステップ』シリーズだったり、『TOMOI』だったり『青のメソポタミア』だったりするわけですが、そこからさらに踏み込んでとうとう「人種」や「民族」といった垣根にまで言及したのがこの『ルネッサンス』だと思われます。

二つの国、イデオロギーによる争いという点では『青のメソポタミア』でも描かれていますが、それは基本「他の惑星」「他の文化の異世界人」というクッションが入っていました。
ところが、核戦争後の地球というクッションはあるにしても今現在私たちが住んでいる現実の「この地球」を舞台にした、という点でよりもぐっと「人種」や「性差」についての作者からのメッセージがより強力に読者に発せられているのがこの『ルネッサンス』でしょう。

=過去記事参照=
★【『花のO-ENステップ』全8巻

★【『デッド・エンド』①
★【『デッド・エンド』②】(*『タイタンへの招待客』)

★【『眠れる森の美男』

★【『TOMOI』①
★【『TOMOI』②

★【『青のメソポタミア』①
★【『青のメソポタミア』②
★【『青のメソポタミア』③
★【『青のメソポタミア』④


さらに、日本古来の神話の神々を冠した名前を登場人物に当てたり、その衣装も神話の時代を参考にしたり、ハイテク日本車の名前にまで神話の『ヤマタノオロチ』から名前を取ったり(*OLOCHI)と盛り込むことで当時としては毛色の変わったSFファンタジーの世界を描いており、それがどことなく我々日本人には馴染み深いのに今までにない…という不思議な感覚を与えてくれたマンガでした。

デッド・エンド』に収録されている『タイタンへの招待客1982年(昭和57年)には『ルネッサンス』のラストと似たようなシーンがあります。
始めはまったくのギャグのようなストーリー展開をしておきながら、最後の最後で作品のトーンが反転、無重力空間でふわふわと主人公の3人が浮かび漂う衝撃のラストはこの『ルネッサンス』のラストのシーンにも活かされています。

ルネッサンス』でも最初は登場人物たちの明るい日常的なフランクな会話から始まりますが、物語が進むにつれてどんどんトーンが沈んでいきます。
そして、全てが終わってしまった…と思わせておいて、また物語冒頭の始まりの世界へと繋がっていくのです。
その始まりの「明るさ」はまるで今までの時間のループを描いており、読み始めの「明るさ」を示してありながら読者にはまったく心が晴れない「明るさ」となっています。





ぱっと見、このマンガは「人種」や「性差」、「民族」の違いや「戦争」をテーマにしていながら、実はもっと人間社会の深い闇の部分をテーマにしているのではないか?

その心が晴れないもやもやした「明るい」世界観が、「復興・復活」の意味を持つこの『ルネッサンス』というマンガの真髄かもしれません。


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