小さなお茶会 ~じるこん堂へようこそ~

匂いの迷路をひげの指すとおり進めば 少々思わぬことに出くわしても辿りつける…らしい。

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青池保子 『エロイカより愛をこめて』 ① 

作品メモ
昭和51年(1976年) 【ビバ・プリンセス】冬頃から掲載
秋田書店【プリンセス・コミックス】
第1巻 昭和53年(1978年)10月発行
 ↓
第19巻 昭和63年(1988年)11月発行

第20巻 平成8年(1996年)8月発行
 ↓
第28巻 平成15年(2003年)4月発行
(*2005年現在第32巻まで発行済み。こるちはまだ第28巻までしか持っていないので)


前回の『華本さんち~』の流れで『バリ伝』に走ろうか、とも思いましたが、やはり地味に‘あいうえお’作家順で進めてみようと思います。

どんなマンガなのか?

「伯爵と少佐のマンガ」

一番短い言葉で説明しろと言われたらこれにつきます。

エロイカより愛をこめて』はもう約30年も前に掲載され、数年のブランクを経てなお現在も連載中のマンガです。当時生まれた子供はもう30歳近く、その子にもさらに子供がいてもおかしくない年月が流れています。しばし遠い目。


「エロイカ」とは、貴族出の美術品愛好家にして怪盗(要するに泥棒です)の主人公、豪華な金髪巻髪のイギリス人、ドリアン・レッド・グローリア伯爵率いる窃盗団の名であり、英雄(=エロイカ)を意味します。

物語ではその「エロイカ」こと伯爵と、NATO情報部所属のドイツ人将校、「鉄のクラウス」ことクラウス・ハインツ・フォン・デム・エーベルバッハ少佐が世界各地を舞台に大活躍(笑)します。
タイトルは007の映画『ロシアより愛をこめて』をまんまもじったもので、ヨーロッパを舞台にした冒険活劇スパイ・コメディとして1970年代半ばに少女漫画に登場しました。

作品メモを見て分かると思いますが、第1~19巻と第20~32巻までの間には8年のブランクがあります。

連載開始は平成7年(1995)からで作者にとっては7年ぶりの再開。
『エロイカ~』は簡単に第1期と第2期に分かれているように見え、それはそのまま昭和と平成の時代の違いであるとも言えます。

その中断の間に、あの劇的なベルリンの壁の崩壊が1989年11月に起こります。
昭和64年と平成元年の狭間の年のことでした。
そして2年後の平成3年(1991)12月にはソビエト連邦の解体と消滅

「東西ドイツの統合、ソ連の消滅で、戦うべき敵を失ったかに見えたエーベルバッハ少佐は、数年間の沈黙の後、いまや統一ドイツより使命を帯びて、冷戦構造崩壊後、世界へ広がり出たあらゆる悪に立ち向かう事になりました。
読者のみなさん、お待たせしました。少佐も伯爵も健在です」

(第20巻の扉より)

耽美な怪盗もので始まったはずが、連載2回目にして現実主義な軍人・少佐が登場したことであっさりその方向性が変わってしまったと作者も言っていますし、ファンの目から見ても初回と連載2回目以降の印象が変わったと分かるほど少佐の登場は強烈でした。

軍人系のキャラと言えば、大和和紀の『はいからさんが通る!』にも金髪碧眼ながら日本人の軍人として登場する‘少尉’こと伊集院さんや、アニメ『攻殻機動隊』に登場する国家公安委員の‘少佐’こと電脳捜査官の素子くらいしか思い浮かびませんが、『エロイカ~』の‘少佐’はそのユニークなキャラクターからか登場から30年経ってもその魅力が衰えません。

時代背景や作品の生い立ちは今年初めに出た以下の本に作者自身がこの長寿マンガについて語っています。伯爵や妖怪経理・ジェームズ君、万能使いパシリのおじさん・ボーナム君が英国ハードロックの雄、レッド・ツェッペリンのメンバーがモデルであったとは!
もちろんBGMとしてもこのマンガに影響を強く与えたそうです。


「ZEP(*レッド・ツェッペリン)とELP(*エマーソン・レイク&パーマー)は徹夜続きの仕事にも欠かせないBGMで、リラックスしつつ集中力が持続できるというありがたい効用があった。(中略)
すべての音が疲労の極限で研ぎ澄まされた神経に快く響き、疾走するリズムは締切りへの切迫感と見事に共鳴して、私のペンをひた走らせた」


青池保子著 『『エロイカより愛をこめて』の創りかた』
マガジンハウス 平成17年(2005)2月発行 


「ラングハーリッヒ!」langhaarig=髪の毛が長いの意

2002年の秋、翻訳家でジャーナリストの佐藤千晶氏がドイツのブックフェアでドイツ連邦軍(以下独軍)の出展ブースを偶然通りかかり、せっかくの機会だし、と本物の軍人さんに『エロイカ~』を紹介した際のことです。インターネットで検索してドイツ語ページの公式ホームページに少佐のスーツ姿が画面に現れたとき、周辺にいた7~8人の陸軍将校たちが、面白がって驚いたとあります。
そうです、エーベルバッハ少佐は肩までかかる黒髪の長髪将校なのです。
本物の軍人さんたちが驚いたくらい、現実には「ありえない!」ことですが、作者もこう説明してます。


「では軍人である少佐が、なぜ長髪なのか。(中略)
理由は簡単、少女漫画だからです。連載当初、少女漫画の主流は長髪のヒーローだった。あちこちの漫画で国籍時代を問わずヒラヒラと長髪をなびかせた美青年が横行し、読者たちは彼らの後れ毛一本の動きにもロマンを見出す時代だった。(中略)
戦車が走ろうと銃撃戦があろうと女っ気がなかろうと、少佐の長髪が少女漫画の証なのだ」


もっとも、作者本人はドイツの兵士さんたちがどんな反応をするだろうか、「少女漫画だから」で納得するだろうか…と心配していたようだが、実際は驚きはしたものの概ね好意的に面白がってくれたようです。



もともと佐藤氏が『エロイカ~』を知ったのは2000年秋と極めて最近のことで、フランクフルトの国際ブックフェアで漫画評論家の夏目房乃介氏に紹介してもらったマンガの中のひとつに『エロイカ~』があったとあります。

その後、氏はブックフェアで知り合った別のジャーナリストから面白い話を聞きつけます。

大勢の漫画ファンがドイツの小さな町を日本から訪れている。
作者の人は観光事業へ貢献したということで市から表彰されたらしい。


これが青池保子先生とエーベルバッハ市の話だったと言います。

同じような話はアニメ『フランダースの犬』でもありましたよね。
ドイツの隣国ベルギーのアントワープ市というとダイヤモンドの加工でも有名な都市ですが、日本から「フランダースの犬の舞台となった場所はここですか?」と観光客が後を絶たず、郊外にとうとうネロとパトラッシュの銅像を建て、観光地になったというのはもう有名なのではないでしょうか。
(その銅像はアニメとは似てないというので日本人観光客には不評というのも有名ですが…)

その後、『エロイカ~』含めほかの作品を読み始め、面白い!ということで出版関係者にも紹介するようになり、2002年秋のブックフェアで独軍ブースを通りかかったところへ繋がるわけです。


そして、そこで紹介されたのが独軍の雑誌『Y.』(イプシロン)で、2003年には『Y.』3月号に『エロイカより愛をこめて』について佐藤千晶氏の記事を掲載させてもらえることになったのです。

その反響はかなり大きくかつポジティブであったと後日談としてあります。

当のドイツには軍人が主人公のドラマや映画がほとんど存在せず、TVでもドキュメンタリー番組くらいでエンターテイメント的なものは皆無に近いそうです。

「漫画作品の主人公が独軍将校であるという点は、感激ですね。なにしろドイツで読まれる大抵のスパイ物は米国や英国等のヒーローが主人公ですから。(中略)
あと、作者の方が正確に細かい点まで描いている点にも感心しました。例えば記事と一緒に掲載されたボンの官庁街の絵。たいへん正確で驚愕しました。そして特筆すべきは、ドイツや独軍をカッコ良く描いてくださっているということ。非常に嬉しいですね。現実が本当にカッコ良いかどうかはまた別の問題ですが(笑)」


その年の秋にあらためて『エロイカ~』の印象について尋ねたところ、『Y.』の軍事主任編集者ヤン・マーベルク氏はそう答えたとありました。



こういう事例は珍しいのかもしれません。

昔アニメ『アルプスの少女ハイジ』がヨーロッパで放送された時、あまりに背景や自然の描写に違和感がなかったため、

「これがヨーロッパから遠く離れた極東の島国日本で製作したアニメなわけがない。これはヨーロッパ製のアニメだ」

と誤解されていたこともあったと言います。

近年知名度もある宮崎駿が関わっているのに何で!?と不思議でしたが、以前ベルギーの隣国ルクセンブルクで現地語のアニメ『レディ・ジョージィ』を偶然見て納得しました。
日本では当たり前のエンディング♪に製作者のクレジットが出ないのです。確か2000年の5月頃ですから、つい最近のことです。

これじゃあ、監督も原作者も製作者も声優さんが誰なのかも分かるわけないじゃん!と思ったものです。

逆に、外国の映画やアニメにも時々あるように、日本という国あるいは日本人が出てくるものには、だいたい

なんじゃそりゃ!?

と笑ったりどん引きしたりする描写が珍しくありません。

極東の日本でしかも約30年も前からこんなハードボイルドかつ華麗でその上コメディなマンガがあるなんて、なかなか想像もつかないのかもしれません。


ああ、夢中になってすっかりおもてなしするのを忘れてました。
今日は、やっぱりネスカフェのゴールドブレンドでしょう。
え?なんでインスタントなんだって?
ほほほ、理由はまた後日と言うことで。まあま、シュトーレンも一緒にどうぞ。

この記事に対するコメント

ついにエロイカ登場ですね^^/
あまりにも文章うますぎて妙に納得しながら読みました。。。ありがとうございます~。
また続くんですね。。。どうぞヨロシク!と、まるで我が子のような気持ちに。。。(笑)
同士、増えたらいいですね^^
【2005/12/29 22:25】
URL | youming #- *編集*

>youmingさん、いらっしゃいませ。
ええ、お待たせしました。『エロイカ~』です。いえ、思い入れたっぷりでどこから手をつけようか考えるだけで楽しくなります。
ファンの数だけ思い入れもあるかと思います。つっこみも歓迎です~。
【2005/12/31 01:20】
URL | こるち #- *編集*

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